スタイルは変わらない!

先制本塁打を放った辻涼介(PL学園)

 PL学園は1回に3番・辻涼介(3年)の2ランで先制すると、2回には辻の犠牲フライと押し出し四球で2点を追加。投げては公式戦初登板の難波雅也(3年)が最速138キロの直球を主体に、粗削りながら力強いピッチングで渋谷打線から凡打の山を築いた。 渋谷のエース・寺本裕哉(3年)も3回以降は立ち直ったが、PL学園は6回に9番・難波のヒットをきっかけに5点を奪い、7回コールドゲームに出来る得点差にした。 難波は結局5安打2四球1失点で7回を完投。今大会から監督に就任した草野裕樹新校長に、公式戦初勝利をプレゼントした。

 草野監督は2009年春夏連続甲子園出場時には部長としてベンチに入っている。そんなこともあって、顔見知りの報道陣に囲まれると「お久しぶりです」となごやかに挨拶して取材が始まった。「(河野有道)元監督と一緒に部長としてベンチに入っていましたので、そんなに違和感はなかった」と初采配の感想を話した。 試合中は、昨秋の大会でベンチからサインを出す役割をしていた背番号15の奥野泰成(3年)と実際にサインを出すタイミングや出し方などを話し合う場面が見られ、1試合を終えて、「疲れますね」と苦笑いした。

 ただその草野監督が強調したのが、「高校野球の基本は生徒がやるもの。監督は補佐というか、生徒がちゃんと野球ができるようにバックアップしてあげることだと思っています」という言葉。だからこそ、選手同士で考えてゲームを進めるこれまでのスタイルは変わらない。

 この試合でもそれを象徴する場面があった。それが2回裏、一死一、二塁で2番・中田一真(3年)が決めたバントヒットだ。 一死から9番・難波の四球、1番・謝名堂陸(3年)のポテンヒットで二人の走者が出た後に打席に立った中田。次の打者は1回に本塁打を放っている3番・辻という状況で、バント一つをとっても様々な形が考えられた。この場面で、一塁前へやや強めに転がすバントをした中田。渋谷のファースト・向田拓海(3年)は、その転がり方と中田の足に、自分でベースを踏むべきか、それともベースカバーのセカンド・小西匠(3年)に投げるのかの判断がわずかに遅れた。結局、小西への送球を選択した向田だったが、中田の足が早くオールセーフとなってしまう。ここで二死とならなかったことが、辻の犠牲フライへと繋がることになった。逆にもし二死で辻の外野フライだったならば、このイニングは点が入っていないことになる。ゲームの流れの中で、大きなポイントになった。

 「監督を頼りにしないぐらいの方が丁度いい」。新指揮官の言葉がPL学園のスタイルが変わらないことを示しているし、選手達同士で考えてゲームをコントロールするチームがもっと増えてきてもいいように思う。