[書評] 呉連鎬『「オーマイニュース」の挑戦』
韓国で市民参加型ジャーナリズムが盛んだ。その代表格が「オーマイニュース」。創業約5年間で、韓国内の有力報道機関に成長し、現政権誕生を後押ししたとも言われる。韓国国民の政治意識の強さもさることながら、やはり情報通信(IT)技術の特徴を巧みに取り入れたことが、成功の秘訣であろう。

 韓国人のメディア研究者と共に筆者はオーマイニュースについて、設立当初からウォッチしていた。韓国はソウル五輪の前年の1987年まで、政府による厳しい言論統制が続いていた。その反動が今日まで至っていると、その友人は話していた。

 明治初期から新聞紙法が施行された明治後期までに至る時期が、日本の言論開花時期にあたる。当時、言論を前面に押し出す「大新聞」が次々に創刊され、明治政府批判を繰り返していた。陸羯南や宮武外骨ら反骨ジャーナリストは時代の申し子だった。現在の韓国のジャーナリズム状況はこれに類似しているのかもしれない。

 言論の開放、韓国大手紙の権力化、そしてIMF支配など、韓国国民の言論への強い欲求がうっ積していた時代に、タイミングよく出てきたのがオーマイニュースであった。そのオーマイニュースの創業者、呉連鎬(オー・ヨンホ)氏のジャーナリズムへの思いや体験記を綴ったのが本書である。

 オー氏の既存ジャーナリズムへの反骨精神と軽快な経営感覚は、日本の市民メディア参加者にとって参考になる点が多い。(太田出版、1890円)【了】