振り返ってみると、僕は彼女に“遭いたくて”琺瑯看板を探し始めたのかもしれない。通学途中の、魚屋の板壁に貼られた彼女の脚線美を、ドキドキしながら横目で見ていたのは、にきびだらけの中学生のとき。今では、 (あの角を曲がったら、ひょっとしたら…)(あの古い土蔵の裏側に、ひょっとしたら…)…なんて、いつも彼女との出遭いを求めて、田舎の道を歩く自分がいる。彼女の名は、由美かおる。おじさんたちを惑わす可憐な花であ