「掃除の際には、サラサラとした状態で処理でき、楽しく作業していただけます」と書かれた「ノンゲーロ」(撮影:ジャッカル金城)

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年末年始、忘年会や新年会などの影響により、鉄道会社は車内清掃に悩まされることが多くなります。しかしある画期的な製品が開発されたことにより、その処理がとても楽になったそうです。その名は「ノンゲーロ」。アレがサラサラになって、楽しくお掃除ができるのだとか。

鉄道会社にとって悩ましい年末年始

 景気回復が叫ばれる昨今、新年会シーズンもそろそろ落ち着く頃でしょうか。忘年会と合わせお酒を飲む機会が多い年末年始。楽しそうな世間とは対照的に、実は鉄道会社にとっては非常に悩ましい時期でもあります。それはいったいなぜでしょう。

 電車に乗っていると「車内清掃のため停車します」というアナウンス、時々耳にすることがあります。「『急病人発生』アナウンスは『痴漢の』隠語だ」なんて説も流れたりしますが、「車内清掃」については文字通り、車内の汚れを処理することを意味しています。

 この「車内清掃」では飲み物や泥、汚物の処理もありますが、実際は吐瀉物を清掃する場合が多いようです。もうおわかりですね。年末年始は鉄道会社で、車内清掃が飛躍的に増える時期なのです。

 2007年、JR神戸線(山陽本線)の新快速車内で大便が散乱しているとの通報があり、明石駅で駅員が清掃を行ったものの臭いが取れないことから、そこでその列車の運休を決定。乗客は後続の列車へ乗り換えたことがありました。

 鉄道会社に非はないとはいえ、そうなると乗客に迷惑をかけてしまうことから、こうした場合はできる限り迅速に処理せねばなりません。では具体的にはどのように車内清掃が行われるのでしょうか。

駅に常備されているおがくず、簡易シート、そして薬品

 大きな汚れが車内で発見された場合、乗客からの通報を受けた乗務員は指令所に連絡。そして指令所から列車の進行先にある駅へ、対処するよう連絡が入ります。そして列車がその駅に到着した際、駅員による車内清掃が行われるという流れが一般的です。乗務員が対応できる場合は車内に常備している薬品を汚物にかけたのち、駅員の到着を待つこともあります。

 到着した駅では、駅員が専用の薬品や「おがくず」をかけて処理。「おがくず」は吸水性が高いのが特徴で、水漏れなどの際に利用されることもあります。またシートの汚れについては簡易シートをかぶせ、そのまま運転を続行。そのため主要駅には汚れ対策のカバーが常備されています。

 吐瀉物を処理する薬品は業務用で、基本的に市販はされていません。その薬品をかけると吐瀉物はすぐに粉末状になり、ほうきで掃いて楽に処理できるそうです。駅員の作業を陰で支えるこの魔法のような薬品、いったいどのようなものなのでしょうか。

「ノンゲーロ」でノロ対策も

 現在、全国の鉄道各社で使用されているそうした薬品は複数存在しますが、そのひとつに、主にJR西日本で使われている「ノンゲーロ」という製品があります。大阪府にある有限会社共栄が22年前に開発した製品で、鉄道会社が吐瀉物の処理に悩んでいることを耳にした同社の社長が試行錯誤。そして生み出されたのがこの「ノンゲーロ」で、当時としては画期的なものでした。

 開発当初は吐瀉物を粉末にしても風で飛んでしまう、という弱点もありましたが、高分子ポリマーを配合して重みを出し、さらに携帯性が必要ということで容器を工夫した結果、JR西日本や名鉄、東京メトロといった多くの鉄道会社に採用してもらえたそうです。

 またこうした薬品の使用機会が多い場所が、駅以外にもあります。車両基地です。列車が車両基地へ戻った段階で汚れが発覚するケースがしばしばあるからです。

 年末年始、人知れず役に立っている「ノンゲーロ」。ちなみに冬場はノロウイルス対策が施された製品が、鉄道会社以外にもホテルや飲食店から多くの引き合いがあるそうです。