ただし4日後にブラジル戦を、3か月後には結果が求められるアジアカップを控えている状況を考えれば、底上げより骨格作りを急がなければならない事情も理解できる。
 
 アギーレ監督は、就任当初からいきなり驚きのラインナップを用意し、前体制からの刷新を図ったが、どうやら大半の抜擢は自分の目で見極めたわけではなかった。それはジャマイカ戦でスタメン起用した塩谷司へのコメントからも読み取れる。
「2か月前に浦和戦を視察した時、塩谷はベンチだった。しかし見られないのは残念だったが、高い評価は聞いていた」
 
 伝聞で抜擢している以上、まだチーム作りは手探りだ。しかし来年初頭に向け、そろそろ手探り状態から脱却し、戦闘態勢を整えなければならない。
「何人交代させるかを決断させるのは、試合の状況だ。途中経過や選手の精神状態にも配慮しなければならない難しい仕事だ」(アギーレ監督)
 
 現状では新メンバーを試すより、武藤のセンターや本田圭佑の左への移動など、戦況に応じた現実的な実験が優先された。
 
 前任のアルベルト・ザッケローニ指揮下では「4-2-3-1」で戦って来た日本代表は、指揮官が代わり「4-3-3」が採用され、攻撃的ポジションの選手たちは少しずつ役割が変わった。それでも就任初戦のウルグアイ戦に比べれば、格段に質と流動性が高まり、その中で若い柴崎、武藤が前体制ではなかったスパイスを利かせている。特にスルーパスを通すだけではなく、パスを受けるためにも果敢な動きを見せる柴崎は、適役を得て中核として機能。
 
「もう20年も経験を積んだかのようにプレーをしている。ワールドクラス、相当高いレベルまで到達する」と、指揮官から絶賛された。
 
 しかし一方で故障者の影響もあり、守備面では課題が山積。格上のウルグアイだけではなく、ベネズエラにも2失点し、無失点で切り抜けたジャマイカ戦もあまり参考にはならない。やはりブラジル戦が大きな試金石となるが、CB、アンカーの幹の部分に止まらず、両SBも精査の余地を残す。
 
 勝利に率直な評価を下せるマッチメイクが難しい日本だけに、ますます真剣勝負を見越した厳しい検証が生命線になる。
 
取材・文:加部 究(スポーツライター)