執念深いというべきか、孫正義ソフトバンク社長の“往生際の悪さ”が憶測を呼んでいる。昨年買収した米携帯電話3位のスプリントによる同4位のTモバイルUS買収が白紙になり、「強い3位を作ってベライゾン、AT&Tの2強に対抗する」と唱えてきた孫社長の野望が頓挫した。ところが本人は8月8日に開催された決算会見の席上「2強よりも3強の方が健全な競争が起きる。中国の三国志を見ても、三つ巴の方が激しい戦いがあった」と力説、リターンマッチへの並々ならぬ決意をにじませた。

 しかし、どうロビー活動を展開しようと「4社が3社に集約されれば寡占化が進む」と難色を示す米規制当局が、そう簡単に首を縦に振るわけはない。それにもかかわらず、なぜ孫社長は未練タラタラなのか。
 「キーワードは彼がスプリントを買収した直後から口にする『ソフトバンクをあらゆる面で世界一の企業にしたい』の言葉です。有利子負債が9兆円を超えれば投資家は『この先、会社は大丈夫か』と疑心暗鬼になる。ところがソフトバンクは違った。買収に次ぐ買収を重ね、熱っぽく世界一うんぬんとバラ色の将来を語ったから投資家が群がったのです。そんな矢先、米国での頓挫を認めれば投資家が失望し、株価が大暴落する。それが怖いから孫社長は“ネバー・ギブアップ”をアピールしているのです」(大手証券マン)

 買収断念により、ソフトバンクの株価は一時約5%も下がった。市場には“孫シンパ”が多いとはいえ、身の丈を超えた借金を抱えているだけに、多くの投資家が“王国”の将来に不安を募らせないはずはない。
 強気を装う“買収宣言”は馬脚を現す。それを孫社長がかみしめる日が来るならば、ホークス球団の身売り話が現実味を増す。