リーグを支えてきたサポーターたちにその真意は伝わったか――(C) Kiminori SAWADA

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観客動員数や地上波による全国中継、スポンサーからの協賛金の減少などを理由に、2015年から2ステージ制に移行することが決まったサッカーJリーグ(J1)だが、この決定にはサポーターから批判が噴出している。過去にJ1が2ステージ制から1ステージ制に移行していることや、2ステージ制にすると日程的にホーム&アウェーの2回戦制が取れなくなるといった不公平感がその理由とされる。

まだまだ課題も多い2ステージ制への移行だが、Jリーグサイドはどのように捉えているのか。19日放送、テレビ東京「FOOT×BRAIN」では、Jリーグチェアマン・大東和美氏とJリーグ統括本部長・中西大介氏が出演。サッカー解説者・都並敏史氏、福田正博氏、サッカーマガジン編集長・北條聡氏らと2ステージ制移行について語った。(以下、要約)

■サポーターからの批判について

大東:ポストシーズンということで、2ステージ制を採用したということですね。ただ、サッカー本来のあり方は1ステージ制で1位が優勝という分かり易さはある。

北條:問題はベストのシーズンシステムをなぜ変えなければいけないのかっていうところをサポーターの人達にあまり伝わってないのが今回の問題なんじゃないか。

大東:情報量の発信が少なかったことは申し訳なく思っています。

福田:色んな意見は必ずある。Jリーグをこれから育てていく責任があるわけで、そこで決められるのは全然いいと思うんですよ。ただ、ここ20年支えてきたコアのサポーター達に説得することを先に入ってないから不満だけが渦巻いている感じがする。僕は“背に腹は変えられないんだよ”って。“これでやるしかないんだよ、日本サッカーは”ってバンと先におっしゃって、それから進んだほうがよかった。その説明責任の方法論だけが問題あるなと。

■2ステージ制に移行する理由

大東:2008年をピークに観客数が毎年減少してきた。

中西:観客数が右肩下がりであることは皆さんよくご存知で、これを止めなきゃいけないというのは共通だと思います。未来に対して明るい数字を持っていれば、今の方式で貫き通した方がいいと我々も思ってたんです。ただ、毎年スタジアムでの調査をやってる。観客の年齢が毎年1歳づつ上がっている。今年初めてJリーグを観にきましたって人の数が年々下がっている。下がっている数字の中で、年間で何回Jリーグを観に来ますかっていう平均の数は増えている。新しいファンがなかなか入ってきていない。これは5年先、10年先を考えると非常に由々しき状態だと思っています。

大東:放送権料だったり、協賛金だったり、下がってきたというのはあります。だから、この右肩下がりを止めてV字回復したいというのが我々の大きな課題だった。

中西:根幹のリーグの収入が減っている。2014年にはマイナス13億のリスクがあった。これをそのまま言えるかどうか迷ったんですけど、これを言わないとサポーターの皆さんに理解して頂けないので正直に申し上げるようにしている。リーグの収入が減ると、どんな影響があるか。一つはクラブの配分金に手をつけないといけない。二つ目は我々が戦略的投資って呼んでいるものがある。これは2002年の収入が上がった時には、レフェリーのプロ化に手を付けました。ちょっと先を見た投資ですね。こういったことを適正な収入を得て、それを最適なものに投資し続けることがサッカー界の発展に大事なポイントだと思う。配分金に手をつけないとすると、そっちのほうに手をつけなくてはならない。そうすると、レフェリーや育成のほうにお金が回りにくくなる。これは避けたい。であるとすると、この数字を止めるために待ったなしの打ち手がどうしても必要だった。

大東:2ステージを選んだ。これをすることによって山(リーグの見せ場)が出来るということで、地上波を含めてメディアが取り上げてくれる。

福田:大きな山を作ることは賛成です。メディアのサイドに立って見ると、Jリーグはほとんど取り上げられない。日本代表の応援には行くけど、Jリーグには行かないっていう人達いますよね。そういう人達をどうやってJリーグに取り込むかっていうのは非常に重要な要素だと思っています。

大東:2ステージ制にすることで我々は約10億円のプラスという試算をしています。放送権料だったり、スポンサー料だったりということ。

中西:先ほどの13億マイナスになるリスクを合わせて考えると20億以上の開きがある。

都並:必ずお客さんに反映されます?

中西:そこが狙いですね。最後の試合があることによって、放送局も最後のチャンピオンシップだけでなくて、レギュラーシーズンもきちんと追ってくれるようになる。

都並:それは根回しがあるわけですか?

中西:根回しですね(笑)

都並:それがないといけないですよね。

中西:レギュラーシーズンを追って貰って、レギュラーシーズンでも地上波の放送を増やす。

中西:我々の調査では、FIFAランキング上位50カ国の約40%の国が、なんらかのカタチでポストシーズン制を採用しています。

■2ステージの不公平論について

中西:この点が一番問題なんだと思います。ここをキープしながら、チャンピオンを決める方法はないのかっていうのは随分検証して話し合った。ここが一番悩ましい。

福田:色々考えた結果だと思うんですけど、ホームとアウェーでうまく調整できて仕組みができれば一番いいかなと思う。

■年間勝ち点1位のチームが日本一になれない可能性も出てくる

中西:かつてあった2ステージ制では、年間勝ち点1位でチャンピオンシップに出れないケースがありました(2000年の柏レイソル)。そこは少し変えようということで年間勝ち点1位はチャンピオンシップに出れる。年間勝ち点1位を尊重する仕組みを取ろうということが実行委員会や理事会で議論されて、採用したということ。彼ら(選手)の意見では2位が出れるというのはどうかという意見もありました。2位よりも、年間の2位を拾ってあげるようなシステムはないかとか、そういうことを参考にしながら少しシステムに手を入れる可能性はありますね。

■得点王は?ACL出場はどうやって決める?

福田:選手としては前期と後期で作って貰って、通年のも出してくれれば沢山貰えていいかなと思いますけど、あまり沢山あり過ぎると賞が軽くなってしまうのは問題なので。

大東:特に得点王もそうですし、ACLもそうですし、賞金の部分もこれから中身を詰めて、検証していく。各クラブの意見も聞きながら埋めていきたい。

中西:ACLに勝つことは、日本のサッカーには重要でここを勝ち抜かないとクラブコンペティションにおいて世界に挑戦できない。細い道ですけど、ここしかないんです。ここを通り抜けて世界に挑戦していたら、Jリーグってレベル高いんだねって色んな人に思って頂ける。これに出るチームの決め方もとっても重要になってくる。

■スケジュールについて

中西:2ステージ制と、もう一つ日本のサッカーにおいて大きい問題はシーズンをいつ始めていつ終わるかっていう問題に対してアプローチしていかないといけない。いずれにせよ、サッカーが出来る期間を長く延していく努力は必要です。それは日本でいうと、2月とか12月にもう少し長くできるような地域と環境。そういうことを整備していくことは必要です。今ある3月から11月の中だけで解決する方法だけではなくて、それを少し広げる方向で解決するアプローチもある。