0円iPhoneはどうして0円なのか?MNP転入は果たして健全か

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NTTドコモは、他社への流出が止まらない、ツートップ作戦は失敗など、今年の夏商戦において、言われたい放題の状況となっています。挙句の果てに一部過剰な報道によりNTTドコモからは取り扱うという発表がないにもかかわらず“iPhone出す出す詐欺”のような扱いまで受けていたりもします。

一方で、ソフトバンクは○ヶ月連続純増数1位、auは○ヶ月連続MNP1位といった、一般ユーザーにとっては、なんだかよく分からないけど「好調」「勝ち組」と受け取れる報道をよく目にします。

果たしてそうなのでしょうか?

確かに、ソフトバンクもauも契約数においては、右肩上がり、ドコモは横ばいと言った点は間違いではありません。2社は好調で、ドコモはイマイチというのは契約者数の数字だけを見れば間違いない結果となっています。

・本当に“一人負け”なのか? ドコモ危機のカラクリ
http://news.livedoor.com/article/detail/7904348/

しかし、この夏商戦、次期iPhone発売の噂も過熱する中、iPhoneをはじめとするスマホの“投売り”を実施しているソフトバンクとauが両手離して好調と言うのは違和感があります。

現在、ソフトバンクとauは条件付ではありますが、iPhone 5の16GBモデルを0円で販売しています。数万円もする主力製品であるiPhoneをわざわざ0円で販売するメリットがあるのでしょうか?
条件の1つにMNP(他社からの乗り換え契約)があります。他社からの乗り換えには優遇施策としてどの機種でも新規契約や機種変更よりも安く販売されているのは常識的になっていますが、iPhone 5の16GB モデルは0円で、本体の元の値段をキャリアが全て負担する形となっています。

LTE通信の定額メニュー申し込み必須や各種オプションサービスの申し込みも必須に加え、ソフトバンクでは、他の機種との同時契約(抱き合わせ)で2回線以上の契約などさまざまな条件を付け、本体を0円にする代わりにキャリア都合が付帯されています。契約数が増え、iPhoneが売れ(実際にはばら撒いている)、定額・オプションなどにより一定の収入があれば、0円で売るメリットは少なからずあります。

しかし、auの場合は定額を外すことも、さらに基本使用料が2年間0円になる施策など、全てのオプションサービスを外すことが実際には可能となっています。そもそも、ソフトバンク、auのどちらも、契約して即解約されれば大赤字な免れないリスクがあります。

企業にとってはメリット以上にリスクが高いようにしか見えませんが、利用者からすれば安く購入できるに越したことはないので、ありがたいという側面もあります。

しかし、ひとたびユーザーになってしまえば、次に機種変更しようとしても乗り換えてきた時のように甘い汁は吸えませんし、そうした投売りを利用するユーザーであれば、次も格安のプランがあれば簡単に他社に乗り換えたり、毎月の利用も最低限もしくは、ほとんど使わず通信料金を抑えたりと、キャリアにとってありがたいユーザーかというと、必ずしもそうでないユーザーを増やしていることにもなっています。

こうした現実におきている状況をみると、本体をばら撒いて正規の利用料金を徴収できないようなビジネスモデルを展開する企業が健全とは言えませんし、健全な競争をしているとは言えないでしょう。

純増数やMNPの数がすべてiPhoneという訳ではありませんが、投売りiPhoneの影響は決して少なくはないでしょう。

MNP市場に関してNTTドコモが苦戦を強いられているのは確かですが、その相手が健全な競争ではなく、なりふり構わず商品を投売りしている相手であれば、真っ向から投売り勝負を展開するしか対抗できなくなります。

しかし、それをすればケータイ市場や業界全体の健全性が大きく失われる危険があります。今、ケータイ業界には、安易に0円安売りという手段に頼らない戦略が必要で、ドコモは早くその方法を見つけることが急務であり、ケータイ市場にとっても重要なことでしょう。