「個人消費が持ち直した」との声の一方で、アベノミクスにやや懐疑的なデータも出始めている。「今の景気は“小春日和”にすぎない」と指摘する大前研一氏が問題点について語る。

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 本格的な景気回復を実現できる可能性が低いと考える理由は、まず日本の人口がこれから年々減少していくということだ。ここ数年はポスト団塊世代が退職する時期となり、労働力人口が毎年40万人以上も減り続ける。これは国の借金を返済する労働力と消費が旺盛な世代が減ることを意味する。そんな国の景気が簡単に良くなったら、それは奇跡かマジックと呼んでもよいだろう。

 さらに、ひとたび海外に出ていった企業は円安になっても戻ってこない。これは過去のイギリスやアメリカなどの歴史を見れば明らかで、日本も例外ではない。国内外の生産比率は若干調整するだろうが、グローバル企業は為替動向に一喜一憂しないシステムをすでに作り上げている。

 そうした難問を克服して経済成長を実現するには、よほど思い切った施策が必要だ。

 安倍首相の経済政策「アベノミクス」では、財政出動と金融緩和に続き成長戦略を「3本目の矢」と位置づけているが、政府の産業競争力会議や規制改革会議の議論を見る限り、新しい発想やアイデアは見えてこない。たとえば、産業競争力会議は「農業」の輸出拡大・強化を掲げているが、産業規模から見てもピント外れと言わざるを得ない。規制改革会議は「過去に改革論議があった59項目」を論点にするというお粗末さだ。

 かつては日本の成長産業と言われたゲームやアニメなどの分野も、ことごとく海外勢に追いつかれ、追い越されてきている。とくにゲーム産業は、コンソールゲーム機が主流の時代は任天堂とソニーが世界市場の大部分をコントロールしていたが、今では主戦場がゲーム機からスマートフォンに移ったため、その変化に対応できなかった両社も苦境に陥っている。ゲームソフトも、今や海外のレベルが日本を凌駕し始めている。

 3月に発売されたアメリカ・EA(エレクトロニック・アーツ)社の新しい『シムシティ』を見ると、市長選の候補者の試験に使うべきだと思うほど緻密にできている。水道、ゴミ問題、失業問題、リサイクル、産業振興、電力問題に至るまで、従来とは段違いにゲームのリアリティが増している。
 
 電力はギリギリではダメだとか、教育レベルが低いとリサイクルに協力しないとか、組み込まれたロジックも面白い。高度な数学的知識に加えて政治や経済の知識もなければ作れないゲームプログラムで、もはや日本のゲームクリエイターのお株は奪われたと痛感した。

※SAPIO2013年6月号