小林:沖縄で、今日と同じように映画の上映と舞台挨拶をやって。僕、BEGINさんのステージを舞台袖で観てたんです。映画が終わって、ボロジノ娘たちが『おじゃりやれ』を唄って、特別ゲストとしてBEGINが出て主題歌の『春にゴンドラ』を歌った後、『島人ぬ宝』をボロジノ娘と歌うっていう流れだったんだけど、あの人たちの人柄が、めちゃくちゃ良い人なんですよ。僕は思いましたね、良い人になろうと。

大竹:今更ですか? こんなに生きてきて(笑)。

小林:なんか、僕ら役者は嘘ばっかりついているんで、大切なものを失っていたんじゃないかって感動しちゃったんだよね。歌っていうのは、その曲を聴いているだけでいろんなことが伝わってくるじゃないですか。そんな力が音楽にはあるなって。

――今、お話に出た“歌”ですが、今回、三吉さんは歌と三線に挑戦してどうでしたか?

三吉:撮影に入る2か月ぐらい前から練習を始めたんですけど、三線をまったく触ったことがないところから始めたので苦労しました。楽譜が普通と違って覚えられなくて。手の置く位置とか、立って弾かなきゃいけないとか。あと、歌いながら弾くっていうのが難しかったです。最後にひとりで『アバヨーイ』を歌って演奏する時は、東京に帰りたいと思うくらい本当に緊張してしまって。途中で投げ出したくなったこともありました。でも、その緊張感が逆にリアルだったというか、出来上がりを観て、自分の持っている100%を出し切れたと思うので良かったです。

 


――今回、みなさんは家族の役柄ですが、娘は島を離れなければならない、父親は島に残される、母親は島を出て行ったという状況です。はじめて脚本を読まれたとき、どう感じられましたか?

小林:僕は、個人的には、家族の情愛みたいなものは苦手なんですよ。少し引いてしまうんです。だから、台本もらった時もそっちの方向とかはあんまりなかったんですけど、(吉田康弘)監督とお会いして、親子の情愛とかっていうのをあんまり前面に出していくんじゃなくて、うまい具合に引き算をしていきましょうよって話になって。その話し合いが大きかったですね。吉田監督はまだ若いんですけど、「吉田監督が撮るんだったら力になるよ」ってスタッフたちが抱えていた仕事をキャンセルしてまで集まっちゃう人なんです、僕も彼の言葉で踏み切ったところがあります。

大竹:わたしも吉田監督のデビュー作の『キトキト!』に出て、今、薫さんが仰ったみたいに、ヨッシー(吉田監督のこと)は本当にワンシーン、ワンカット全力投球なんで、一緒に映画を作りたいっていうのがあって。2作目が、なかなか実現しなかったんですけど「やっと撮れるね」って。今回は単純にママが好き、パパが好きな家族じゃない、ちょっと複雑な家族構成になっていて、私が演じる明美はなぜ子供と離れて暮らしているのか、なかなか想像つかない部分もあったんですけど、監督と色々お話しながら作っていきました。最後の『アバヨーイ』で「お父さんお母さんありがとう」につながるのがうまくいってるなと思いました。

三吉:私は、撮影期間の1カ月くらい前に親元を離れたばかりだったので、優奈と自分が重なる部分が多くて共感しました。

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