小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第135号(2013年03月28日配信号)より抜粋※

 3月19日から21日までの日程で第23回イギョラカップ2013が開催された。全国からJユースや高体連の強豪チームが16チーム集まり、東京朝鮮高校グラウンドや赤羽スポーツの森を中心にグループリーグが行なわれ、最終日の21日は順位決定トーナメントが行なわれた。
 
 西が丘で行なわれた準決勝には、東京朝鮮(A組1位)、実践学園(B組1位)、流経大柏(C組1位)、三菱養和ユース(D組1位)が進出し、決勝は実践学園と流経大柏の間で行なわれ、流経大柏が2年連続となる優勝を飾った。
 
 今回はまず、昨年も話を聞いた元北朝鮮代表のエースストライカーでジュビロ磐田でもプレーした金鍾成(キム・ジョンソン)氏に話を聞いた。イギョラカップの大会技術委員長を務める金氏は、これまで朝鮮大学の監督を務めていたが、今年度は現場を離れ、在日本朝鮮人蹴球協会の副会長として選手育成や指導者養成のプロジェクトを一任されることになるという。
 
 続いて話を聞いたのは、決勝で実践学園を2−1で下し連覇を果たした流経大柏の高橋隆コーチ。流経大柏は今年も新3年ではなく新2年のみでのチーム編成で大会に臨んだが、今年も圧倒的な選手層の厚さを誇示した。今大会は高橋コーチが任されていたのか、決勝後は本田裕一郎監督がすぐに帰ってしまい、高橋コーチが取材対応してくれた。

■金鍾成(キム・ジョンソン)氏(大会技術委員長)インタビュー

――イギョラカップの成り立ちについて改めて教えて下さい。
 
金鍾成氏(以下、金氏) 元々、朝鮮高校は選手権などの公式戦に参加できなかったので、それに見合った大会をOBたちが作ってあげたいというのと、もう一つはやはり協力関係のある学校で選手権に参加できるよう促していく交流の場というのでこのイギョラ杯は始まりました。
 
――今年で23回目となりますが、Jリーグよりも歴史があり、ユース年代の大会・フェスティバルの中でも価値の高い大会だと感じます。
 
金氏 朝鮮高校が参加している全国的なフェスティバルの中で、23回を超えているものは鹿島フェスティバルと、あとは韮崎の武田の里(編集部注:武田の里にらさきサッカーフェスティバル)があるんですけど、そこの方がもっと長いのかな。
 
――鍾成さん自身もこの大会に出ているのですか?
 
金氏 いや、私は出ていないですね。私が朝鮮高校の監督をしている時にちょうど携わり始めて、今はもうOB会の幹事長なので、企画や運営の方に携わっています。
 
――参加資格、チームを呼ぶ基準は「直近の選手権に出たかどうか」ですか?
 
金氏 基準はないです。ただ、そういうふうになってきたのと、いろいろな要望、事情があるので東京に関しては「選手権に出たところにしよう」となりました。東京の学校は遠方から来るような事情は関係なく、基本的には出場したがるだろうということで選手権参加校にしています。ただし、成立学園高校の場合はグラウンド、運営などの絡みがあって、ずっと出てもらっています。
 
――出場したいと問い合わせる高校も多いのでは?
 
金氏 多いですね。市船(市立船橋高校)も話がありましたし、旭川実業(旭川実業高校)もありました。もう少しグラウンドが確保できれば規模を大きくしても対応できるとは思うのですが、今は(新たに)グラウンドを確保して、会場を分散して規模を大きくするのは難しいですね。
 
――西が丘(国立西が丘サッカー場)で決勝と3位決定戦をやるのは、かなり前からなのでしょうか?
 
金氏 そうですね。東京サッカー協会が第4回大会くらいから共同主催になっていただいていて、そのお陰もあって西が丘もしっかりおさえてもらえています。西が丘は高校生にとってある意味、国立(国立競技場)の次ぐらいのメッカとなっているので。
 
――大会パンフレットを拝見すると、焼き肉レストランを含め、サポートしている企業や人の協賛が多い印象を受けます。
 
金氏 当初は大会予算が1000万円くらいあって、参加チームに対して援助金を出したり、交通費も含めて出したりしていたこともありました。でも今は、一切ありません。まあ、どこのフェスティバルに行っても自分たちでやっていますから。

 あとは、景気の部分も関係しています。今は、OB会がOBたちを集めながら基本的に小口で頑張って、形だけ広告を出してやるとか、どんどんそういうふうに広がっていって、ちょっと落ち着いた状態になりました。

小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」第135号(2013年03月28日配信号)より抜粋※