購入した覚えがない商品を強引に送りつけられ、代金引換などの形で法外な料金を請求される「送りつけ商法」(代引き詐欺ともいう)の被害者が続出している。

特に多いのが健康食品をめぐるケースで、国民生活センターへの取材によれば2012年度の相談件数は13年3月25日時点で前年比約5倍の1万45件に達し、しかもその大半がこの数ヶ月に集中している。被害は全国に広がっており、同センターは注意喚起に懸命だ。

「申し込んだんだから金払え」「録音もある」

国民生活センターの資料から、事例の1つを紹介する。

三重県の80代男性は、知らない業者から「以前に申し込まれた健康食品を配達してもよいか」との電話を突然受けた。もちろん身に覚えがないので断ったが、その日のうちに代引きで健康食品が届いた。受け取りを拒否すると再び電話があり、

「1か月もかかって製造したものを受け取らないとは、会社をつぶす気か! 3個約3万円を約2万円に値下げした、自分で申し込んだのだから支払え」

と凄まれた。泣く泣く次の配達で受け取ったが、3個入りのはずが1個しか入っていなかったという。

同様の手口は各地で相次いでおり、ほぼ日本全国で被害が確認されている。2012年度の相談件数は上半期(10月15日時点)が1905件だったのに対し、下半期は実に8140件に上る。

特に増えているのが、上記のように怒鳴る、あるいは「申し込みの会話を録音している」などといった脅しまがいの言動などで、無理やり受け取りを迫るケースだ。主なターゲットは判断能力が低下した高齢者で、相談件数の8割が65歳以上という。要求する金額は平均約10万円程度で、中には100万円以上という高額な事例もある。ほとんどの場合業者名は名乗らず、配送業者を装って自ら届けに来るケースも目立つという。

なおこうした強引な販売は特定商取引法や薬事法に抵触する可能性がある。2月には都内の業者が消費者庁から6ヶ月の業務停止を命じられる事例があった。

以前は「カニカニ詐欺」が多かった

こうした悪徳商法は「ネガティブ・オプション」ともいわれ以前から存在したが、近年増加が目立つという。特に数年前には粗悪なカニを送りつけてくる手口が多く、「カニカニ詐欺」とも呼ばれることがあった。

国民生活センターによれば対策としては、とにかくきっぱり断ること、それでも送りつけられた場合は必ず受け取りを拒否することが重要だという。業者は連絡先などを名乗らないことがほとんどのため、1度受け取ってしまうと返金させることが非常に難しいためだ。また高齢者が標的とされるため、家族や周囲の注意も求められる。

国民生活センターでは、トラブルがあった場合はすぐに地元の消費生活センターに相談するよう呼びかけている。