他方、オフィスビル市場については、めぼしい大型の案件がほぼ開発を終了している。今後は2020年頃の完成が計画されている山手線品川―田町駅間の新駅を見据えて、羽田付近まで含めた近隣地域への投資が活発化し、地価の上昇が起こりうる。

地方に関しては、個々に需要と供給の状態が大きく異なっており、決して一概には語れない。たとえば、札幌、福岡ともLTC(格安航空会社)の路線が就航して利便性が増したが、福岡は発展著しいアジアに近く、その違いが不動産市況にも表れがちだ。

不動産投資市場については、リーマン・ショックの前後で投資家の顔ぶれに目立った変化が生じているようだ。かつてはロバート・キヨサキ氏の本に触発されて大がかりな投資に挑む人が多かったのに対し、最近はもっと小口でワンルームマンションや郊外物件に投じるケースが増えている。

ともあれこうした賃貸物件は、結局のところ家賃勝負と化す。好立地でオンリーワンの状況なら家賃を下げなくても済むが、そうでなければ競争にさらされるのだ。そもそも、大半の投資家は建物の老朽化(購入後の修繕の必要性や度合い)などの見極めが甘く、割高な値段で物件を買っている。同じ築年数の物件でも、それまでの管理次第で老朽化にはかなりの違いが生じるので、大いに注意すべきだろう。

2013年を読み解く急所!
供給数微増で新築マンションも底打ちの感触が強まってきたものの、消費税率引き上げ前の駆け込み需要は期待薄。対照的に中古マンションはいち早く復活しており、今後についても強含むとみられる。

長嶋 修(OSAMU NAGASHIMA)
さくら事務所創業者・代表取締役 不動産コンサルタント

1999 年、「人と不動産のより幸せな関係」を追求するために、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社?さくら事務所を設立。業界・政策提言や社会問題全般にも言及するなど精力的に活動。



この記事は「WEBネットマネー2013年1月号」に掲載されたものです。