苦戦を自覚する菅氏は駅前演説に精を出すが、足を止める人は少ない。前総理なのに……

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政権与党である民主党に強烈な逆風が吹くなかで迎える、12月16日の衆院総選挙。第三極の動きも活発化しており、政界で重要な地位を築いてきた大物議員ですら、落選の危機に立たされている。

まず注目なのが東京18区(武蔵野市、府中市、小金井市など)、前総理大臣である菅直人氏の選挙区だ。対抗馬は元武蔵野市長の土屋正忠候補と横粂勝仁候補。土屋氏は郵政解散選挙で小泉チルドレンとして、横粂氏は前回の政権交代選挙で民主党の風を受けて、ともに小選挙区で負けての比例復活組。一見、大した戦力ではないようにも思えるが……。

ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「菅さんは危ないです。地元では『もういいだろう』という声が多いんです。土屋さんが有力でしょう」と予想。しかし、元大物議員秘書の池田和隆氏は「いくら菅さんが落ち目だからといって、土屋さんも届かないと思いますよ」と“元総理”の肩書きを重視する。

また、池田氏は同選挙区で席を争う横粂氏について、「同じ負けるなら、菅さんに歯向かって恩も礼儀も知らない男だというレッテルを貼られるより、(前回、神奈川11区で同選挙区だった)小泉進次郎さんに挑戦し続けたほうが好感度アップするに決まっています。そんな簡単な計算もできないなら、政治家の資質はないですね」とバッサリ。

「横粂さんは、民主党のおかげで勝った人。わざわざ国替えしてまで、恩のある民主党の代表格のところで出馬するのは筋が通らないですよ。こういう行動は特に、投票率の高い高齢者ウケが非常に悪いんです。考え方が違うなら離党まではいいんです。どうせ負けるなら、100パーセントの負けを覚悟で小泉進次郎さんに挑戦し、一方的にライバル視するような発言を繰り返せば、男も上がるし知名度もさらに高まる」(池田氏)

菅氏の当落は、「対抗馬がどれだけ健闘できるか」という点に左右されそうだ。

元官房長官、仙谷由人氏の当選にも黄信号が点灯している。徳島1区(徳島市、名東郡)だ。

「民主党の調査でも、NHKの世論調査でも、仙谷氏惨敗と出たようで、本当に落選の危機にあるのではといわれています。比例復活の道もありますが、最近は露出が少なく、存在感が沈んでいる。厳しいかもしれません」(鈴木)

しかし、菅氏と同じく仙谷氏にも対抗馬の“弱さ”が目立ち、プロの意見も真っぷたつに。

「自民党は新人なのにフレッシュさゼロの59歳の老人県議(福山守氏)をぶつけてきた。これでは仙谷さんが勝ちます」(池田)

さらに、新党・日本未来の党に合流を決めた、小沢一郎氏の岩手4区(花巻市、北上市、奥州市など)。待望の無罪判決が出た今もダーティなイメージが消えていないうえ、妻・和子さんの「離縁状」騒ぎも暗い影を落としているが……。

「地元では批判の矛先は和子さんに集中していますが、小沢氏にもまったく影響がないわけではない。勝ち負けにまでは至らないものの、確実にマイナス要因」(池田)

ほかにも新設大学の許認可をめぐって騒動を起こしたばかりの田中真紀子氏(新潟5区)ら、先行きが不透明な大物議員たちがゴロゴロ……。これらの議員たちは本来、当選確実といわれて当然の面々。にもかかわらず、これほどの不安要素が上がってしまうのは、まさに、今回の総選挙が先の見えない乱戦であることを表しているといえるだろう。

(取材・文/本誌総選挙取材班 撮影/井上太郎)

■週刊プレイボーイ51号「キミの一票で大物議員を落選させられる楽しい選挙区はココ!!!」より