――中越さんや高岡さんなど、『悪の教典―序章―』の共演者の印象は如何でしたか?

伊藤:女優さんは本当に逞しいですし、すごく心が綺麗だし、魂が強いですよね。中越さんはすごく声が魅力的で心地良くて、間が良い人だなという印象ですね。今回初めて共演させてもらったんですけど、やり取りがすごく面白かったです。ドラマは課金だし、分かり易く説明したら多分、一回しか観ないと思うんですよね。「一体何だったんだろう?」という感じで2回、3回と観てもらうことも意識すると、中越さんとも高岡さんとも知恵を絞りながら「どうすればキャラクターが立つか」とか監督と相談して、それぞれの関係性が見えれば、もっと大人的なクオリティの高いものに仕上がると思って。そういう話がちゃんと出来る人達だったので、共演者に恵まれてすごく良かったなと思います。

俺達役者って、人間色々なことがあるのを、ちょっとずつ演技としてエネルギーに変えていかないといけないんだけど、高岡さんは人生を全部受け入れてるからこそ、本当に素晴らしい女優さんなんだなと心から思います。高岡さんも同じように声が素晴らしいし、間が良いし、女性としてもすごく魅力的だし、色気があるなという印象です。

――伊藤さんもすごく良い声をされてると思いますよ。

伊藤:よく言われます(笑)。

――映画のクライマックスとなる虐殺シーンを演じた時の心境は如何でしたか?

伊藤:常にニュートラルでいましたね。殺していけばいくほど段々、何も考えないというか、無心ですよね。監督がOKするかしないかは別として、もし自分の頭の中で「サイコパス、悪い役はこう演じなきゃいけない」というカテゴライズが成立した場合、要はもう出来上がったものでしかないから、これからの僕が苦しいなと思って。分かり易く決着を付けてしまったら、これからの役者人生が狭くなると思いましたね。それはすごく怖かったし、だからこそ裸になれたというのもあるし。

役者の世界って、ベテランからド新人まで同じフィールドで戦う訳じゃないですか。大げさに言うと、魂のやり取りみたいな。そういうのって経験も何も関係無いし、本当にその時に出たエネルギーだと思うんですよね。だから、経験の少ない近い新人がいきなり蓮実に殺されるのは、もの凄く計り知れないプレッシャーですよね。そういうのをプレッシャーとして感じず、その場を楽しんで、三池監督に怒鳴られる子もいれば、優しく諭される場合もあるし。

監督自身も、ただ側に行って帰って来たり、モニターの横で見てたり、色んな子によって個性を変えて演出をされているので、人を見抜く力がもの凄く優れている方だなと思うんですね。ある意味「監督は、凄く蓮実だな」と思うのは、人間の痛みも苦しみも喜びも分かっているからこそ、監督と話す時に何か見透かされている様で怖いんですよね。だから僕も裸になれたと思うし、数多い役者が「監督に撮ってもらいたい」とか「付いて行きたい」という想いがあるんだなと今回5年ぶりにやらせてもらって改めて感じましたし、もの凄く愛があるんですよね。スタッフも童心に戻って映画を楽しんでいると言うか、お客さんにクオリティの高いものを観てもらおうという熱意のある現場だし。僕も演技が上手くなったかどうか分からないけど、物の捉え方とか人との接し方とか、三池塾でもう一回ストイックに教え込まれた感じがします。

もう「寝てない」とか「疲れた」とか、寝てたら良い物が出来るかと言ったら、そういう訳ではないし、全部やり切るということですよね。アラフォーに差し掛かって考えるんですけど、これからが長いし、普段から何を見て、感じて、どうやって生きるかが役に繋がってくると思うし、自分がしてきたことに勝るものは絶対に無い。それ以上に引き出してくれるのは監督、スタッフ、共演者の力だと思うし。台本というルールブックは守らなきゃいけないけど、そこからハミ出してもいいと思うんですね。そこでみんなと戦って、どれだけ時間が掛かろうが面倒臭かろうが、ぶつかり合えば良いと思うんです。それで、エネルギーのぶつけ合いを途中で止めないことですよね。それが大変だなと思う。綺麗ごとを言えば、何に対しても愛があればいいかなと。ちょっと今、格好付けてみました(笑)。

――今後、続編の構想は?

三池:いや、蓮実の今後がどうなってくるのか全く想像がつかない。

伊藤:でも、観て見たいですよね。

三池:貴志先生には一応、伝えてあるけどね(笑)。

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