プロ野球のドラフト会議がこのほど開かれ、北海道日本ハムファイターズが花巻東高等学校の投手、大谷翔平との交渉権を獲得した。

　すでに米メジャーリーグへの挑戦を表明している大谷は、ファイターズの指名に驚きつつも、「（入団の）可能性はゼロです」と言い切った。
　これに対し栗山英樹ファイターズ監督は、「（入団が）困難なことを理解した上で日本ハムは編成に携わる人たちが命がけでやっている。そのチーム方針を変えてはいけないと思った」と指名の経緯を説明。「話を聞いてもらえるチャンスをもらえたというふうに捉えている。できる限り早く花巻に行きたい。何度でも足を運ぶつもりです」と、日本シリーズ終了後にも自ら大谷に誠意を伝える考えだ。

　ファイターズの交渉権は来年３月31日まで。大谷のメジャー球団との交渉は、４月以降になる。

　22日の更新「わが道を行け」（http://blog.livedoor.jp/yuill/archives/51694746.html）では、「メジャーに挑戦したいのなら、ルールが許す限りチャレンジすればいい」との持論を展開した。
　日本球界を経ずにメジャー挑戦を希望する大谷も、何らルールに反していない。だから、大谷のメジャー挑戦を応援している。

　一方で、ファイターズの指名にも、異論はない。最も必要としている逸材を、ルールに則り指名しただけだ。
　周囲からの雑音は当分やまないと思うが、球団がはたして大谷の説得に成功するのか、注目したい。

　気になるのは、交渉が決裂した場合だ。ファイターズは昨年も、ドラフト１位指名選手との交渉に失敗している。
　昨年は、東海大学の投手、菅野智之を１位指名。原辰徳読売ジャイアンツ監督の甥である菅野は、かねてよりジャイアンツへの入団を希望しており、ファイターズとの契約合意には至らなかった。
　菅野に続き、大谷と、２年連続でドラフト１位選手との交渉が失敗に終わると、どうしても印象は悪くなるし、将来的な戦力ダウンも懸念される。

　交渉が失敗に終われば、メディアはファイターズを批判するだろう。冒頭で紹介したように、ファイターズが指名したことで大谷のメジャー挑戦は来年４月まで引き伸ばされた。これでファイターズが説得に失敗すれば、メディアがこのことを叩くことは、想像に難くない。

　そんなメディアの姿勢は、今も昔も変わらない。埼玉西武ライオンズがクラウンライター・ライオンズと名乗っていた1977年、法政大学の江川卓との交渉に失敗。するとメディアは、「クラウンは、獲れもしないのに江川卓選手を強行指名した。そのために、これほどの大素材が１年も棒に振る結末になっている」と、ライオンズの江川指名を批判した。

　昨年ファイターズが１位指名した菅野は今年、晴れてジャイアンツが交渉権を獲得した。今年のドラフト会議は、菅野の念願がかなうかに注目が集まったが、その中で多くのメディアがファイターズを、菅野の野球人生における挫折の象徴のように扱っていた。

　繰り返すが、ファイターズには、何ら非は無い。昨年の菅野にしろ、今年の大谷にしろ、ルールに従い彼らを１位指名しただけだ。
　これをおかしいというのなら、ドラフト会議のあり方を根底から見直さなければならない。

　だが、２年連続でドラフト１位指名選手の獲得に失敗すると、将来の戦力強化やイメージなどの面で、ファイターズのダメージは小さくない。
　ファイターズとしては、是が非でも大谷との契約合意にこぎつけたいところだ。