今シーズンのベイスターズの全試合が終わった。46勝85敗13引き分け、勝率3割5分1厘、首位と41ゲーム差。もちろん最下位。開幕前に予想された通りの戦績だった。

 この成績についての愚痴は、別の機会に譲るとして、最終戦となった10月9日の甲子園球場での阪神戦は、今期最高の試合だったと思う。

 阪神・金本知憲の引退試合となったこの試合は、満員の観客を集め、5位対6位の消化試合とは思えない熱気に包まれていた。

 ベイスターズの先発は、絶対的エースの三浦大輔投手。三浦は本気だった。何しろこの試合に二桁勝利がかかっていた。今季、年俸の大幅削減という屈辱的扱いを受け、完全復活をアピールするためにも、負けられない試合だった。

 しかも、相手は長年ライバルとして戦い続けてきた金本選手だ。金本が初ホームランを打ったのも三浦投手からだった。だから、引退試合と言っても、三浦は鬼気迫る投球をした。金本にも一切手を抜かなかった。もちろん金本もフルスイングで応えた。結局、三浦は、3失点はしたものの、8回132球を投げきった。ただ、味方の援護がまったくなく、3対0で敗れてしまった。

 引退セレモニーのあいさつで、金本選手は、ベイスターズに対して「選手より監督が目立つようではダメ」と檄を飛ばした。そう。今年のベイスターズ球団は、中畑監督の個人的なキャラクターでメディアにアピールすることだけに終始した。選手のやる気を引き出す年俸も与えなかったし、選手たちの強力なライバルになる新戦力の獲得にも失敗した。結局、満員の甲子園を盛り上げる力を持つ選手は、三浦大輔投手以外にはいなかったのだ。

 ところが、DeNAの池田純球団社長は、試合の翌日、金本選手の言葉を受けてこう語った。「おっしゃる通りなんです。今年の球団のMVPは勝敗に関係なく、間違いなく中畑清。監督が目立ってるようじゃダメ。来季は選手がもっとスポットライトを浴びないと」。「負けても必死こいてるわけじゃないし、負けにすごい慣れている。甘いんです。甘さをなくしてもらわないと金本さんのように尊敬される選手は生まれてこない」。

 あれ。あれ、あれ???。社長、ベイスターズのMVPは中畑監督なんですか?メディアで目立つことがMVPなんですか。最貧打線を背負いながら9勝もした三浦投手には感動しなかったんですか。

 自分の責任を棚上げして、結果の責任を「甘いんだ」と現場に押しつける。こんな球団社長の下で選手が育つはずがない。少し早いが、来期の最下位が見えてきた気がする。

森永卓郎(もりながたくろう)
昭和32年生まれ 東京大学経済学部経済学科卒業
日本専売公社、経済企画庁総合計画局、(株)UFJ総合研究所などを経て、現在、獨協大学経済学部教授。専門は労働経済学。主な著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』光文社2003年、『しあわせの集め方 B級コレクションのススメ』扶桑社2008年など多数。
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