デイリースポーツ
甲子園球場で開催中の全国高校野球選手権大会に出場している宇都宮市の作新学院高校2年で硬式野球部員の男子生徒(17)が、強盗容疑などで逮捕されたことが18日、宇都宮中央署と同校への取材で分かった。逮捕は17日。


この男子生徒は今月10日午前6時50分ごろ、宇都宮市内の雑木林で少女(16)のひざに軽傷を負わせた上、現金数千円を奪うなどした疑い。
高野連は、「過去の事例から、部活動外の個人の不祥事で出場を差し止めたことはない」としている。

この生徒はベンチから外れていたのだろう。2年生だから、あまり見込みがなかったのかもしれない。甲子園に連れて行ってもらえなかった彼は、鬱々として楽しまなかったのかもしれない。
夏休み中である。この少年は、金だけでなく、少女にも興味があったのではないか。仲間が甲子園に行って、希望に満ちて練習をしているときに、こういう情けない罪を犯していたのである。

これが成人の犯罪ならば、責任は言うまでもなく全面的に本人にある。しかし、未成年の場合は、保護者と学校に監督責任がある。野球部員であれば、野球部の指導者に責任がないとは絶対に言えない。

「部活動外の個人の不祥事」は罪に問わないのだとすれば、野球の練習中に盗みや暴力沙汰でも起さない限り、野球部員は何をしても良いということにならないか。
部員間の暴力は、出場差し止めの対象になっても、よその女の子への暴力なら許されるというのは、おかしくないか。

ましてやこの生徒がやったことは、たばこを吸ったり、万引きをしたりという軽微な犯罪ではない。強盗致傷である。凶悪犯罪だ。仮に、この生徒が少女を襲って殺してしまったとしても、高野連は「部活動外の個人の不祥事」でやり過ごすつもりなのだろうか。

高野連にしてみれば、夏の甲子園は今、盛り上がりの最中だ。ロンドン五輪が終わって、世間の注目は、甲子園に集まろうとしている。作新学院はつい先日、19安打19得点の猛攻で立正大淞南を撃破したばかりである。このチームに、甲子園を去れとは、絶対に言えないというところなのだろう。

要するに「甲子園」という興行を守るために、凶悪犯罪者を身内から出した学校を庇っていることにならないか。

部員の万引きや、喫煙、暴力沙汰で対外試合を禁止されたり、甲子園の予選に出られなかったりする学校がある一方、部員が強盗を犯しても見逃される学校もある。

この不公平は、教育的見地から見て正しいのか。

私は、高野連が、あたかも法皇のように高校球児の行状を裁き、罰を与えるという今のスタイルそのものがおかしいと思っている。

高校野球界には、怪しげな人物が暗躍したり、金が動いたり、教育的に見てもおかしなことがいくらもある。あたかも「人買い」のように中学生、高校生を売り込んで金儲けをするビジネスも存在している。

これを看過して、形式上の罰を与えてこと足れりとする姿勢。己が権威を保とうとする姿勢は、アマチュア野球にとって益するところは何もないと思う。



甲子園で野球をやっている最中に、出場校の部員が強盗をしても指導者、学校は何ら責任がないとするのなら、高野連は、今後、すべての高校の不祥事を看過すべきだ。

また、作新学院が、営利組織ではなく教育機関だというのなら、自身の判断で甲子園から去るべきだ。