『消費税増税法案』への反対姿勢を明確にし、俄然、新党結成に邁進しだした民主党の小沢一郎元代表。その一挙手一投足に政界はピリピリムードだが、永田町では政治の真骨頂である「数」を巡る攻防戦が熾烈さを増している。
 というのも、政界関係者らの最大の関心事は、「小沢新党にいったい何人の議員が集結するのか」。『消費税増税法案』の衆院採決後も新党設立に向けた動きは加速していくと見られ、今も血みどろの争奪戦が繰り広げられているのである。
 中でも、野田佳彦総理ら「増税派」を震え上がらせているのは、なりふり構わぬ小沢氏の政治手腕だ。
 小誌は、先週号で野田-小沢間で交わされた“密約”について触れたが、小沢氏は同法案の与野党合意後にこれを棚上げ。新党設立へ向けたアクセルを猛烈に踏みだしたのだ。

 政治部記者がこう話す。
 「その最たるものが、6月21日に都内のホテルで開かれた小沢会合なのです。ご存じの通り、この席で小沢は新党予備軍として集まった議員らに次々と血判状を押させた。これが原因で官邸筋と野党である自公議員らに衝撃が走り、血で血を洗う議員争奪戦が勃発したのです」

 ちなみにこの直前、与野党幹部らは「会合に集まるのは、せいぜい30人程度」とタカをくくっていたという。ところが、49人の議員が血判状に署名したことから「政権の命運を左右しかねない」と、大慌てとなったのだ。民放キー局の政治部解説委員が、その恐ろしさを解説する。
 「現在、与党は衆院で292議席(=民主党289議席、国民新党3議席)あるが、仮に54人が離党すると過半数割れを引き起こし、少数野党に転落する。あらゆる法案が野党の反対で通らなくなるのです。つまり、小沢氏が抱き込んだ議員数は、この射程範囲内。政権を転覆させかねない恐ろしい数字だというわけです」

 しかも『消費税増税法案』が、参院で可決する前に造反者数が51人に膨れ上がった場合には、不信任案の提出も可能となる。「増税派」にとってその勢力は、誠に厄介な数なのだ。
 そのため、今では野田総理らは、議員の引き締めに必死。特に小沢グループから接触がありそうな議員には、血眼の説得工作を展開しているという。
 「官邸筋は『造反しなければ、次期選挙における対立候補も自公と話し合いの上、善処する』『選挙資金も面倒を見る』となだめすかしている。また、『造反すれば強力な対立候補を立てる』と脅しつけるほどで、その慌てぶりに『野田政権も長くない』と陰口を叩く者もいるほどなのです」(民主党中間派議員)