iPhoneで大人気の写真用アプリ「インスタグラム」のアンドロイド版が登場した。

 アンドロイド・ファンにはうれしいニュースに、たいそうご不満なのがアップル・ユーザーの皆様方だ。「下層階級のアンドロイド人と一緒にされるのはごめんだ」などと、ネット上で嫌悪感をぶちまけている。

 ならば私も言わせてもらおう。私はインスタグラムも、あれを使う気取り屋も嫌いだったが、これでますます嫌いになった。

 インスタグラムは、自分の撮った写真にフィルターをかけ、レトロなアナログ感を出すシンプルなアプリだ。

 このアプリが一昨年の秋頃に出現して以来、およそ才能はないのに流行にだけは敏感な連中がこぞって、くだらない写真を撮りまくるようになった。どんな駄作も、インスタグラムでフィルターをかければ「アート」になると勘違いしている。

 彼らは次に、フェイスブックなどのソーシャルネットワークにアクセスし、自慢の作品をべたべた貼り出した。それだけでは飽き足らず、みんなでシェアするに値すると信ずる「傑作」を見つけたら、それもどさどさ貼り付けるようになった。

 そして今ではちょっとした写真家気取り。たちの悪いことに、アートや文化を論じる見識もあると思い込んでいるらしい。だからこそ彼らは、アンドロイドでインスタグラムを使えるようになったら、自分たちの大事なアートクラブが下劣な作品で「汚染される」と不満の声を上げている。

洗脳されたユーザーたち

 悪い冗談だと、初め私は思っていた。しかし気が付けば大手メディアもこの話題を取り上げていて、アップルとアンドロイドの「階級闘争」だなどと論じている。

 この闘争の根っこには、アップル派は「高所得で趣味が良く」、アンドロイド派は「アップル製品の良さが理解できない、あるいは理解しても安価な後発商品を選ぶ愚か者」という決め付けがある。
両陣営のユーザー層に違いがあるのは事実だろう。しかし、それを階級闘争にまで発展させるのは大げさだし、ばかげている。私はアップル携帯もアンドロイド携帯も持っていて、両方を使い分けている。

 iPhone4Sは素晴らしい製品で、私自身も多くの人に推奨してきた。だがアンドロイド携帯にも、同じぐらい素晴らしいものがある。例えばモトローラ製の最新機種、ドロイドレーザーマックスは私のお気に入りで、今は一番よく使っている。

 携帯は今や私たちの生活に欠かせない存在で、文字どおり肌身離さず持ち歩くもの。だから着る服や乗る車と同じように、持ち主の人となりを表す要素の1つとなっている。

 アップルのマーケティング部は、アップル製品を買えばセンスが良くて優れた人になれると人々を洗脳することに成功した。アップル製品を購入すれば誰でもアートやデザイン、建築やファッションの専門家に変身できると信じ込ませたのだ。

 もちろん、アップル製品を買えばセンスが良くなるとか、無料アプリをダウンロードすれば写真家になれると信じているのは愚か者だけだ。だがアップルとインスタグラムのおかげで、こうした愚か者が爆発的に増殖し、ひどい写真や無知な意見を世界中にばらまいている。

 ならばこちらも開き直るしかない。アップルとインスタグラム、そしてアンドロイド派を侮辱する思い上がった諸君に感謝しよう。その憐れむべき愚かな意見とくだらない写真は、実に滑稽な笑いのネタをわれわれに提供してくれるのだから。

[2012.4.18号掲載]

ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)