どの街の企画展も興味深いものばかり。

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フランス北西に位置するブルターニュ地方。異なる文化圏であるケルトの慣習が残り、フランス国内でも個性的な地方の一つだ。じつは今年、現地で「ブルターニュ日本2012」と銘打ったイベントが1年間にわたっておこなわれている。なぜフランスの一地方であるブルターニュが、日本と関連性を持っているのか? 

19世紀後半、フランスではジャポニスムという日本趣味が流行した。ジャポニスムとは、ルネサンス以来の芸術表現を打破し新しい技法を生み出そうとした芸術家たちが、浮世絵など日本美術から影響を受けて生まれた傾向である。じつはブルターニュは、そのジャポニスムの画家たちによって好んで描かれてきた場所なのだ。

多くの芸術家たちは、ブルターニュの景色を題材として選んだだけでなく、ブルターニュと日本の類似点も取り上げた。例えば、20世紀初めに日本を訪れ多くの作品を残した画家メウーは、日本と故郷ブルターニュの風景が似ていることに心をとらえられた。また彼は、日本人とブルターニュ人の性格にも相似を見出した。当時、ドゥミエール子爵へ宛てた書簡の中で、「横浜から大阪への旅はブルターニュを思い出すようだった」と述べている。多くの松が植わる海岸をはじめ、遠い外国だと思った日本の風土は、彼に望郷の念を思い起こさせた。

さらにブルターニュは、軍港があるブレストをはじめ、海路を通じての日本とのつながりも深かった。19世紀半ばに日本が鎖国を解いた際、多くの日本の文物が港のあるブルターニュへもたらされた。それらは現在、レンヌのロビアン・コレクションや、ロリアンにある東インド会社博物館の伊万里焼の数々、またブレスト美術館に寄贈されたセシーユ提督のコレクションに見ることができる。

この企画は、ブルターニュ地方内11都市にある12の美術館が中心となっている。浮世絵や陶器、人形などの工芸品にはじまり、日本美術から影響を受けた当時の絵画など日本に関連したものが多数展示されている。作品総数は800に上り、10のオペラなども上映される。日本美術の集積とジャポニスムはパリだけではない。今年のブルターニュは日本がさらに身近になっている。
(加藤亨延)