『おもひでぽろぽろ』(C)1991 岡本螢・刀根夕子・GNH

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 震災復興で頑張っている東北を応援する「東北・映画で元気に復興」特集。東北を舞台にした映画を紹介するこの企画、第2回目は、山形の映画『おもひでぽろぽろ』をご紹介。岡本螢・刀根夕子の漫画を原作に、スタジオジブリが映画化した名作である。主人公のタエ子の声は、今井美樹が。そして、山形で有機栽培農業をする青年トシオの声を柳葉敏郎が務めた。

おもひでぽろぽろ

 東京の会社に勤務する岡島タエ子は東京生まれの東京育ち。小学生の頃から田舎に憧れていて、田舎で農作業を手伝うことが趣味となっている。ある日、休暇を取り、結婚した姉の夫の親戚の家に、農業を手伝いに行くことに。親戚のいる山形までの道中、小学校5年生の時代を思い出す。田舎に憧れて熱海に連れて行ってもらったこと、淡い小学生の恋物語、スターへの夢など、思い出があふれ出す――。

【元気のポイント】農業への熱い想いと芯の強さ

 タエ子の小学生の時代は、1966年。監督・脚本を担当した高畑勲は当時の様子を徹底的にリサーチした。ブラウン管テレビの中に登場する「ひょっこりひょうたん島」は、資料がほとんど残っておらず、偶然録音していたカセットの持ち主を探し出し再現させた。そんな苦労の末つくられた映像は、リアルさを感じる。そこがこの映画の見どころではあるが、今回はもう一つ。トシオについて注目したい。会社勤めをやめて、有機栽培農業をする山形の青年トシオが結構良いことを言う。「生き物を育てるのは面白い。」というトシオに対して、タエ子は「畜産?」と聞く。しかし「稲だってリンゴだって生き物でしょ。」と言い、大事に愛情かけて育てると返してくれるので嬉しいと農業についての情熱を語る。また「農業は今、大変なんでしょ。」という問いに対して「大変、大変と言うけど、一生懸命やっている仕事で大変でないものなんてないでしょ。それは都会の仕事でも同じじゃないですか。」と自らの苦労を語ろうとしない。過疎化や減反など大変なことがあっても、それを嘆くのではなく、山形を農業を愛し、自分のできることを強い芯を持ってやる。その心は都会に住むものを含め、大きく学ぶところがある。

【東北文化】伝統ある山形のベニバナ栽培

 この映画で、タエ子が山形に行く目的はベニバナ摘みをするため。江戸初期、山形は質・量とも日本一の紅花産地として栄え、最盛期には全国の6割を占めたらしい。当時の栽培、加工製造や出荷、流通の様子が「紅花屏風」という文化財に記されている。だが、残念なことに劇中でトシオが「最近では少なくなった」という通り、明治に入ると中国紅花や外国産の化学染料が多く入ってきて、紅花生産は衰退してしまう。ただ近年、この伝統文化を守ろうという動きもある。本物志向の染めものとして、リノール酸を多く含み動脈硬化症の予防の食用油として再び注目を集めようとしている。山形県の県花としても指定されている。7月上旬から中旬頃にかけて、畑一面に咲き乱れるベニバナを見ることができる。今年の夏は山形に足を運びベニバナ観賞をするのはいかがだろうか。

【まとめ】田舎はなぜ懐かしくかんじるのか

 どこか田舎へ旅行した時に「落ち着く」「懐かしい」という気持ちになったことはないだろうか。別に田舎生まれでもないのに、そう感じるのはなぜだろうか。東京生まれ東京育ちのタエ子もそう感じた。その答えをトシオは「田舎の景色は人間につくったもの」だからだと言う。森も林も小川も人間が自然と戦ったり、自然からいろんなものをもらったりしているうちにできあがった景色。つまり人間がつくった景色だから「懐かしい」という気持ちになるのだそうだ。確かにそう言われると納得する。人間と自然がうまく助け合い生きてきてつくられた東北の美しい景色、我々はこれを絶やしてはいけない。

「東北・映画で元気に復興」特集

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