2011年10月25日配信の「しみマガ」より抜粋

 トップチームの監督の仕事が、『保有戦力で望める最高の結果を出すこと』と定義するなら、結果論ではありますが、ペトロビッチがオランダサッカーでスタートした判断は選手の特徴に合わなかった、すなわち失敗だったと言わざるを得ません。
 オランダ人の平均身長は180センチを越えていて、内転筋が強く、インサイドキックで距離の長いパスを出すことができます。そもそも体格が違うのだから、彼らのサッカースタイルは日本人選手には簡単には合わないということでしょう。

 特に浦和は山田直や柏木など小兵が多く、オランダ人的なプレーよりも、アジリティー(敏しょう性)や運動量を生かすスタイルのほうがやりやすかったのかもしれません。ただ、すでに述べたようにペトロビッチも中期〜後期にはそうした方向性に舵を切ったわけですが、一連の思考錯誤の中で取るべき勝ち点を失ったのも事実だと思います。

 もちろん、ペトロビッチにも同情しなければならない点はあります。

 GMの柱谷幸一氏から『主導権(ポゼッション)を握る攻撃的なサッカー』というリクエストを受けて就任したにもかかわらず、センターバックに補強した永田充は新潟のカウンタースタイルのサッカーで活躍した選手。そしてもう1人のセンターバック、スピラノビッチもボールテクニックは下手ではないが状況判断が遅く、ワンタッチ、ツータッチでプレーするスピード感に乏しい選手です。

 きちんとゴールに向かうポゼッションをするためには、『ボランチが前を向いてボールを持つこと』が一つのキーポイントになります。

 ガンバ大阪でいえば、遠藤保仁が前を向いてボールに触れるように、彼自身も自由に動くし、周りもサッと預けるようにしています。浦和でいえば柏木や鈴木啓太にいい状態でボールを渡せるようにしなければならない。

 そのためには、センターバックがパスを回して敵のFWをかわし、良いタイミングでボランチにボールを渡さなければならないのですが……永田とスピラノビッチにはそれがほとんど出来ませんでした。DF間で横パスを回すだけで、縦に運ぶことができないのです。

 それに加えてシーズン序盤は、ボランチの柏木が距離感を広くした状態にフィットできず不調だったため、浦和は後方からのビルドアップはほとんど機能しませんでした。

 ならばとそれを諦めると、FWに長いクサビを入れて、ポストプレーからボランチに前を向いた状態でボールを預けるという選択肢になりますが、これに関しても序盤のエジミウソン、そして中期から加入したデスポトビッチ、どちらもあまり上手ではなく、やはり機能しない。

 前で溜まらない、後ろからも運べない。これはなかなかに絶望的な状況です。ガンバ大阪のようにビルドアップがうまいチームはこの両方を使いこなすことができ、それほどビルドアップがうまくないクラブでも、前か後ろかどちらかの方法論はだいたい持っているものです。

 しかし、浦和には両方が欠けていた。下位クラブならともかく、浦和ほどの運営予算があってこのような状況に陥るのは完全にフロント(選手スカウティング)の落ち度です。

続きは「しみマガ」にてどうぞ!