週末は天皇杯の試合があったりで珍しくJリーグがないので、この機会に2011年シーズンのここまでのJ1・J2までの観客動員の状況をまとめてみたいと思います。まずは週末のうちに作成しておいたこちらの表。Jリーグ全体を俯瞰する視点を重視して、あえてJ1・J2を分けずに全チームで平均観客動員数の多い順から並べてみました。

【ホームゲームにおける観客動員数の前年との比較】
J1全体観客動員平均 前年比82.0% 2011年15,441人 2010年18,428人
J2全体観客動員平均 前年比93.2% 2011年 6,244人 2010年 6,696人
※2011年平均は10/6終了時点、2010年平均は全試合消化時点での数値。
※前年比は平均動員数を前年度と比較。色付きはJ2のチーム。
ホームゲームにおける観客動員数の前年との比較


今年の観客動員の平均を見るとJ1が前年比82%、J2が前年比93.2%となっています。全体的な下落傾向にある中でJ2の方が減り幅が少ないのは、昨年観客動員が4位だったFC東京がJ2に降格した影響が大きいだろうと感じるところです。順位を見てみるとFC東京が7位にあるのが目立つくらいで、観客動員という面ではJ1とJ2の差は歴然としています。

FC東京は震災の影響で延期となった4節栃木戦はホーム開催ながら、震災の代替開催で味スタ・国立・駒沢などの競技場を確保できなかったためか、遠隔地の埼玉県熊谷で開催され、6,795人の来場に終わりました。この変則的な開催となった試合を除くと平均で16,599人(前年比で66.1%)程度となります。FC東京の現時点での現実的な平均動員数はこれくらいと考えた方が良さそうです。思ったより下落幅が大きいのは、サポ以外の都内でJ1の試合を見ることができなくなったライト層離れがあった影響かもしれません。

また東京Vはこの表を見ると一見前年に比して健闘しているように見えますが、実は5/4に行われた第10節FC東京戦で、現時点でのJ2動員記録である28,832人を集め、これが今季の観客動員全体の35.7%を占めています。最終的にはその比率も下がっていくでしょうが、現時点でそのFC東京戦の動員を除くと平均動員は一気に3,991人まで落ち込む部分は留意すべき点でしょう。

仙台や鹿島、水戸などは震災による被災の影響もあったでしょうし、震災による日程や会場変更も少なからず動員に影響があったはずです。観客動員の減少が言及される浦和、中村俊輔効果もあっただろうと思われる横浜、優勝の好影響があった名古屋などは相対的な意味で減少幅が比較的大きく、数値以上に平均値を押し下げていると考えてもよさそうです。また昇格した3チームを見ると甲府は前年割れしているものの、福岡・柏に関しては前年比で観客数を大きく伸ばしました。

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もうひとつJ2への降格、J1昇格の観客動員の増減についても少し考察したいと思います。2009年の降格チームは千葉・柏・大分。大分の減少幅は財政難で下位に低迷したことと、09年末の一連の騒動の影響を加味すべきだと思いますが、千葉・柏の減少からも見えるように、通常の降格による減少幅は2〜3割程度と考えます。大分・千葉のようにJ2残留した場合はさらに10%〜20%減少する可能性が高そうです。今季の京都・湘南の観客動員苦戦は降格に加えて、J2でも苦戦していることと無関係ではないでしょう。

また昇格効果を考えた時、チームの観客動員ベースで違ってくるとは思いますが、基本的に観客動員数が増えるのは間違いありません。ただ降格時の減少幅と同じくらいの2〜3割増となるのが理想ですが、現実には下位に低迷するようだと、観客動員にも確実に影響するはずで、今季の柏のように上位にでも躍進しない限り、大幅な増員は難しいのかもしれません。J1のチームは平均で1万人超えをしているチームが多いですが、そこに到達するにはJ2の段階で平均7,000〜8,000人くらいまで伸ばしておくことが必要ではないでしょうか。


昨年ナビスコ杯優勝した磐田といったチーム、J2でも地道に取り組んでいる岡山・熊本といったチームは、こういう状況下でも前年よりプラスにしています(岐阜は長良川を使えるようになったからもあるでしょうか?)。成績の向上は勢いをつける一つの要因ですが、優勝争いや昇格のような大きなものにならないと、必ずしも観客動員に直結していないことは着目したい部分です。勝敗に大きく左右されないコア層の育成・新規取り込みを増やすと共に、ライト層や新規をいかに開拓し、つなぎ止めていくかが、各チームの工夫のしどころと言えるでしょう。

個人的にはホームの試合だけでなく、アウェイの動員をいかに増やすかも中長期的に見れば重要な施策なのかなとは感じるところです。アウェイの動員自体は自チームの観客動員に直結するわけではありませんが、営業的に対戦相手同士で協力し合うことでプラスに出来る面もあるでしょうし、何よりホームに比べれば明らかに少数の人員で結束して応援することは、チームへのロイヤリティを高めることに繋がるような気がします。やはり成績に依存した動員や営業活動には限界がありますし、それだけでないチームの可能性を提示することが、今後重要になってくるような気がしますね。