シアトル・マリナーズ「納豆打線」の秘密を探る|2011年MLBペナントレース

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シアトル・マリナーズ=SEAが、借金1にまで回復してきた。6連勝。これまでは投手陣の優秀さばかり目立っていたが、昨日などは粘りに粘る打線で勝った。大物を獲得したわけではない。既存の選手がうまく機能しているのだ。去年と何がどう変わったか、その秘密を数字で見てみる。

まずは打撃の収支。自チーム(SEA)の打撃成績と、相手チーム(OPP)の打撃成績。つまり「打った」記録と「打たれた」記録の比較。RBI/Gは1試合当たりの打点。打点生産性とでも呼ぶべき数字。TB/Hは平均塁打。

2010年と2011年でSEAの打線は大差がない。出塁率、長打率、平均塁打はむしろ下がっている。しかし、打点生産性が明白に上がっている。相手チームとの比較では、2010年がSEA2.99、OPP4.07、つまり3点取って4点取られていたのに対し、今年はSEA3.51、OPP3.53とイーブンにまで戻している。これは、投手陣がさらに優秀になったということだが、同時に、打線の力は変わらないが、得点に絡むようになったということだ。

打線のどこが良くなったのか。打順別に成績を昨年と比較してみよう。右端はその打順で最も打席数が多かった選手名。

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イチロー、フィギンズが昨年よりも打点生産性が上がっている。昨年はブラニャンとホセ・ロペスが中軸としてそれなりの数字を残した。これに比べれば今年の3、4番はむしろ下がっているが、5番以降の下位打線の打点生産性が向上している。グラフにしてみると、昨年との違いがより鮮明になる。

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昨年は3、4番こそ打点を稼いでいたものの、他の打者は打点生産性が低かった。相手投手にしてみれば、3、4番にだけ気を付けていれば他の打者は安全パイだった。今年は、上位も下位もまんべんなく打点を稼いでいる。つまり、1番から9番まで打線のつながりができているのだ。昨日のミネソタ・ツインズ=MIN戦では、延長10回にイチローが送りバントをし、ルイス・ロドリゲスが犠飛で決勝点を挙げた。個々の打力ではなく、一人ひとりができることをして、得点に絡んでいこうという意識が生まれているように思う。結果として粘り強い打線が生まれつつある。

最近のSEAは、大型補強をした年には見事にひっくり返り、補強をしない年に好成績を上げている。GMなど首脳陣に選手を見る目がないのかもしれないが、そもそもニューヨーク・ヤンキーズやボストン・レッドソックスみたいな派手な選手漁りは柄に合わないのではないか。万年下位のSEAは、ウェーバー制によって有望選手を数多く獲得してきた。選手育成こそがSEAの生きる道なのだ。今年もピネダ、ぺゲーロ、マイク・ウィルソンなどの新人が出場している。間もなく大型新人ダスティン・アックリーも上がってくるだろう。SEAは生え抜き、無名選手をうまく活用して納豆みたいな粘りで活路を開くべきだ。