クラブ・ワールドカップは準決勝までが終了し、マゼンベ(コンゴ)とインテル・ミラノ(イタリア)が18日のファイナルへ進出した。

中継をしている日本テレビは、「クラブのワールドカップ」という表現をしばしば使う。W杯に比肩する攻防が繰り広げられていると、視聴者に印象付けたいのだろう。

個人的な思いを明かせば、W杯のスケール感には及ばないというのが正直な感想だ。開催国のUAEに出場ワクが与えられ、W杯出場には他大陸とのプレーオフを勝ち抜かなければならないオセアニア地区もチームを送り込んでいるのだ。レベルダウンは避けられないだろう。だからといって、退屈な大会というわけではない。僕にとっては興味深いゲームが展開されている。

ここまでの5試合から大会を定義すると、「非ポゼッション」というキーワードが浮かんでくる。南アW杯でスペインが披露したポゼッションサッカーは、バルサがクラシコで5−0の大勝を遂げたことにより、今後も世界のトレンドであることを改めて誇示した。ボールを保持することでゲームを支配する彼らのスタイルは、スペクタクルと結果を両立させている。

今大会で勝ち上がってきた2チームは違う。アフリカ勢初の決勝進出を果たしたマゼンベは、堅固な守備ブロックとタテに速いサッカーを持ち味とする。パチューカ(メキシコ)戦では42対58、インテルナシオナル(ブラジル)戦では46対54と、ポゼッション率は相手に譲った。シュート数でも劣っている。インテルナシオナル戦では、ほぼ倍のシュートを浴びた。しかし結果は、1−0と2−0なのである。

パチューカとインテルナシオナルに、マゼンベの守備ブロックを切り崩す「個」が見当たらなかったのは確かだ。両チームともに枠内シュート率は低く、ペナルティエリア外からのものも目立つ。その一方で、マゼンベの戦いぶりは実効性が高い。どちらのゲームでも、ポゼッションやシュート数ほどには追い詰められていなかった。

インテル・ミラノはどうだろう。城南一和との準決勝のポゼッションは、53対47である。シュート数は7対16で、アジア代表に倍近いシュートを許している。スコアは3−0だが、ワンサイドゲームではなかった。

それこそが、インテルの求める試合である。

開始3分に先制点を奪い、前半のうちにリードを2点にひろげるゲーム展開で、無理をする必要はない。中2日で決勝戦を迎えることを考えても、体力の消耗を最低限に抑えたほうがいい。

そもそも、ポゼッションで圧倒するのはインテル本来のサッカーでない。城南一和戦ではシュート7本のうち6本が枠内で、そのうち3点をゴールへ結びつけた。きわめて効率が良く、それでいて決定力の高い攻撃は、モウリーニョからベニテスへ監督が変わっても息づいている。

ボールを保持する時間ではなく、どこで持つのかというゾーンにこだわり、なおかつシュートへ結びつける精度を突きつめた両チームのコンセプトは、勝利をつかむための方法論として間違いなく成立する。スペインやバルサに代表されるポゼッションサッカーの魅力は尽きないが、マゼンベやインテルのサッカーを否定することはつながらない、と僕は考えている。

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