■ 2戦目

初戦のアメリカ戦では、GKグリーンの痛恨のキャッチミスもあって1対1の引き分け。ドロースタートとなった優勝候補のイングランドがアルジェリアと対戦。アルジェリアは初戦のスロベニア戦でいい試合を見せたが0対1で敗戦。グループリーグ突破するの可能性を残すために連敗だけは避けたい。

注目されたイングランドのスタメンは、GKグリーンが外れてGKジェームズが先発出場。さらにMFバリーが復帰し、MFジェラード、MFランパード、MFレノンで中盤を構成。FWルーニーとFWヘスキーの2トップ。対するアルジェリアはGKシャウシが外れて元FC琉球のGKライス・エンポリがスタメン出場。

■ 2試合連続でドロー

試合は予想以上にアルジェリアが健闘。イングランドを相手に互角以上に戦ってチャンスを作る。イングランドは頼みの中盤がイマひとつで、FWルーニーも思うようなプレーは出来ず。前半は0対0で終了する。

後半は膠着状態となる。イングランドはFWデフォー、FWクラウチらを投入し、何とか勝ち点「3」を目指して戦うが、アルジェリアのGKライス・エンポリの活躍もあって、最後まで、アルジェリアのゴールを割ることは出来ず。結局、この試合は0対0で終了。試合終了後にサポーターからブーイングが浴びせられたイングランドは、2試合連続のドロー。3試合目のスロベニア戦にグループ突破をかける。

■ 厳しいイングランド

イングランドは、今大会、2試合を終えて、MFジェラードが挙げた1ゴールのみ。欧州予選で最多の34得点を奪った自慢の攻撃陣は全く精彩を欠いている。大黒柱のFWルーニーが本調子ではなく、彼がほとんどシュートチャンスを作れていないのが響いていてゴールが遠い状態になっている。アメリカ戦では両サイドからの攻撃は機能していたが、この日は不発。攻撃のバランスは非常に悪かった。

毎度、イングランドは手堅いチームを作ってくるが、今回はDFファーディナンドが不在で、DFテリーも万全ではない。GKを含めて守備陣に問題を抱えているため、上位進出には「得点力」が不可欠となるがあまりうまくいっていない。他の欧州勢も苦戦しているとはいるが、チーム状態としては、かなり悪い部類である。

3戦目のスロベニア戦に勝てば勝ち点でスロベニアを逆転できるので、自力での突破の可能性は残っているが、グループ2位になると、その試合の直後に行われるドイツとガーナの試合の結果次第であるが、決勝トーナメントの1回戦でドイツと対戦する可能性が高くなる。スロベニア戦では勝利だけでなくゴールも求められる。

■ 健闘したアルジェリア

初戦のスロベニア戦に続いてアルジェリアは内容としては悪くなかった。イングランドの選手と比べると知名度では劣るが、テクニックや運動量では停滞感のあったイングランドの中盤を上回っていて、ボール支配率では53%を記録し、ゴール前の迫力には欠けたが、思い通りの試合が出来たのではないだろうか?

これで勝ち点「1」となったアルジェリアは3戦目のアメリカ戦にグループ突破をかけることになった。2分けのアメリカに勝てばアメリカよりも順位を上にすることが出来る。そして、スロベニアがイングランドに勝つか、引き分けると2位以内が確定。また、イングランドが2点差以上でスロベニアに勝つか、アルジェリアが2点差以上で勝つと、スロベニアを得失点差で上回ることが出来る。不振が続くアフリカ勢の中、もっとも期待の薄かったアルジェリアのグループリーグ突破はなるのだろうか?

■ ライス・エンポリのワールドカップ�

そのアルジェリアのゴールを守ったのはスラビア・ソフィアに所属するGKライス・エンボリである。今大会初出場でいきなりイングランド相手ということでプレッシャーがかかる試合であったが、落ち着いた守備で無失点に抑えた。

そのGKライス・エンポリは日本になじみのある選手である。2008年シーズンに、Division1(J1)とDivision2(J2)のさらに下の3部リーグに相当するJFL(日本フットボールリーグ)のFC琉球に所属しており、個人的にも、カターレ富山のホームスタジアムである富山県総合運動公園陸上競技場でGKライス・エンポリの試合を観たときのプレーが印象に残っている。

日本の中で、外国人GKというだけでも珍しいが、しかも、黒人でバネのあるゴールキーピングで目を引いたが、フランスU-17代表だったという経歴や珍しい名前だったこともあって、「面白い選手がいるんだな。」と思っていたが、それにしても、2年前に日本の3部リーグに所属していた選手が、ワールドカップという大舞台でイングランド代表を完封してしまうとは痛快である。

     → 【JFL:カターレ富山×FC琉球】 元日本代表FW山下芳輝との遭遇 (生観戦記 #17)

■ ライス・エンポリのワールドカップ�

そもそも、なぜに彼が日本でプレーしていたのかであるが、もともとはフランス育ちでマルセイユの下部組織出身。ということで、FC琉球の総監督のフィリップ・トルシエ氏のマルセイユ監督時代の教え子に当たるという。FC琉球でプレーしたのは2008年の1シーズンのみであり、2009年からブルガリアのスラヴィア・ソフィアに移籍。その活躍が認められて、母親の祖国であるアルジェリア国籍を取得して、ワールドカップメンバー入りを果たしたらしい。

今大会は日本代表の選手以外にも、北朝鮮のFW鄭大世やMF安英学、オーストラリアのFWケネディや韓国のDF李正秀ら現役のJリーガーの何人かが母国の代表チームでプレーしている。また、韓国のMF朴智星やコートジボワールのFWドゥンビアのように、以前、Jリーグでプレーしていた選手も何人かいる。こういう日本サッカーに関わりを持つ選手は、(FW安貞桓のような例外を除くと、)国対国という枠を超えて、無条件で応援したくなるから不思議である。

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