ベストセラー『28年目のハーフタイム』など、稀代のノンフィクション作家として注目され、現在はFC琉球(JFL)のスーパーバイザーも務める金子達仁氏。

 そんな金子氏は、W杯南アフリカ大会ではアフリカ勢がベスト4の一つに入ると、著書『敗北という収穫』のなかで予想している。日本代表のベスト4入りよりも、はるかに現実味があるという予想だ。
 
 もちろん「何が起こるかわからない」。そして「何が起こるかわからない」はスポーツの醍醐味でもある。しかし、この言葉は本来「何が起こるかわからないから、その不測の事態を防ぐために頑張り、努力を積み重ねなければいけない」という教訓である。今、多くの日本人は、2010年南アフリカ大会を前にして「何が起こるかわからないから、ベスト4に入る可能性もある」といった使い方をしている。

 しかし振り返ってみれば、過去3回出場したW杯のなかで、何かを起こしたのは02年の日韓大会だけ。この時はファンもチームもメディアもピタっと一つにまとまっていた。
 
 「決勝トーナメント進出」
 
 これが02年には絶対目標としてあったからだ。一方、98年は何もなかった。目標も持たず、監督自らが「1勝1分け1敗」などと、とんちんかんなことを言ってしまった。

 06年に関しても目標はまったくなかった。中田英寿氏は優勝するつもりだった。でも「試合に出場できればいい」という選手もいた。自分の実力がどんなものなのかと模索している選手もいた。まったくもってバラバラだった。それが一次リーグ敗退という結果になって表れた。

 南アフリカ大会を率いる岡田監督は、02年大会で成功したのは、ホームだったということもあるが「目標の設定」があったからと分析した。そして「ベスト4」という目標を掲げたのだ。
 
 しかし、その目標はあまりにも大きすぎた。大きすぎてファンも怒らない。メディアも怒らない。選手も焦らない......。それほど大きいのだ。
 
 だったら目標は「決勝トーナメント進出だ」と言いなおせばいいと金子氏は指摘する。最終的な目標はベスト4でもいい。しかし、一種のノルマとして、一次リーグ突破を位置づけてみてはどうだろうか。ただ、ベスト16にしても今の日本代表のレベルでは相当難しい目標のはずだ。

 南アフリカ大会で、日本代表はどのような結果を残すのだろうか。

 金子氏は敗北でいいとも話す。ただし、それならフランス大会のような微妙な3敗ではなく、プライドをこっぱ微塵にされるような負けが必要だと。中途半端な戦績ならば「悲劇的な敗北」のほうが、日本サッカーの将来のためになるからだ。

 いよいよW杯が開幕する。果たして我らが日本代表は、どんな戦い方をするのだろうか。



『敗北という収穫 』
 著者:金子 達仁
 出版社:中央公論新社
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