国交省と中国国際航空の言い分は対立している(写真は同社のエアバスA320型機)

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   中国の航空機が、管制塔の許可を受けないまま滑走路に着陸するという異例の事態が発生した。たまたま周辺に飛行機がいなかったことから大事には至らなかったが、国交省は「国内の航空会社ならば、着陸をやり直すでしょう」とあきれ気味だ。

   ところが、中国側は「周波数を指示通り変更したが、管制塔側が呼びかけに応じなかった」などと反論。両者の言い分は平行線だ。

「何度も呼びかけたが、管制塔は応答しなかった」

   国土交通省の発表によると、乗員・乗客155人を乗せた大連発成田行きの中国国際航空951便(CA951便、ボーイング737-800型機)が2010年4月25日正午過ぎ、管制官の着陸許可を受けずに成田空港の滑走路に着陸した。具体的には、周辺空域を管理する「東京ターミナル管制所」(TOKYO APPROACH)が12時8分、CA951便に対して、周波数を切り換えた上で、離着陸の管理をする「成田飛行場管制所」の「NARITA TOWER」と呼ばれるセクションと交信するように指示。CA951便も、指示内容を復唱した。

   ところが、この直後からCA951便との通信が途絶え、3分後の12時11分、管制官の許可がないままB(16L)滑走路に着陸した。この3分間に飛行した距離は、約12キロだ。直後に、NARITA TOWERとの通信が回復し、指示を受けて到着スポットに向かった。

   なお、国交省では、「CA951便の通信不可の間において、前後を飛行している航空機とは十分な間隔があり、運航に支障は及んでいない」と、実質的な被害はなかったとの立場だ。

   ところが、中国国際航空側にも、言い分があるようなのだ。複数の中国メディアが4月27日に伝えたところによると、同社の担当者は、

「CA951便は、成田空港に着陸する前は、東京進入管制の指示に従って飛行を続けていた。1800フィートまで高度を下げた時、東京進入管制はCA951便に対して、16L(B)滑走路にアプローチするように指示し、CA951便は周波数を変更した。CA951便は、通常の周波数と緊急用の周波数を使って何度も呼びかけたが、管制塔は応答しなかった」

と主張。国交省は「CA951便が通信設定をしなかった(=周波数を切り換えなかった)」とする一方、中国側は「管制塔が応答しなかった」と、真っ向から言い分が対立した形だ。

国交省は「中国側が設定を間違えた」

   さらに中国側は、

「この時の天候は良好で、飛行高度も低く、飛行状態も安定しており、滑走路上には障害物がなく、他の飛行機もいないことを目視確認し、安全を確保した上で、マニュアル通りに安全に着陸した」

などと、許可無しでの着陸を正当化するともとれる主張をしたという。

   一方の国交省航空局管制保安部管制課でも、同様の主張を中国国際航空から聞いているとしながらも、

「CA951便がどの周波数を使ったかは分かりませんが、管制塔側では、あらかじめ決められた、いくつかの周波数しか受信していません。結果として(地上と飛行機との)会話ができていない訳です。中国側は『緊急用周波数も使った』と言っているようですが、決められている周波数以外で呼びかけられても、管制塔側は分かりません」

と、やはり「中国側が設定を間違えた」との立場だ。さらに、

「国内の航空会社であれば、着陸をやり直すケース。中国国際航空側には、(問題の着陸の)当日に注意してあります。原因はヒューマンエラー、つまり『セットのし間違え』だと思うので、『間違わないようにして下さい』としか言いようがありません」

と、「これ以上、手の打ちようがない」という様子。特に再調査を行う予定もないという。

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