W杯本戦出場を11月のプレーオフに賭けるフランス。14日の予選最終オーストリア戦は、それに向けてのたんなる“調整試合”となった。そんな中、前大会(ドイツ)で主将としてチームを決勝まで導いたジネディーヌ・ジダン氏が今回のフランス代表に欠けていたのは「自信」であるとの見方を示した。

 12日、元フランス代表DFビシェンテ・リザラズ氏がパーソナリティーを務めるラジオのサッカー番組(RTL局)にゲストで招かれたジダン氏は、現在のフランス代表について「(優勝した)98年のように、選手たちは欧州最高のクラブでプレーし、高いレベルの経験をもっている。だから、いまの(予選で苦戦する)状態にあるのが誰も信じられないんだ」と分析する。

 「たとえば、同じ状態にあったのが過去のスペイン。いつでもいいチームだったのに、タイトルをとったことはなかった。それがいったん勝ったことで(ユーロ2008)、大きなものを得た」と全勝で予選を突破したスペインを例に挙げ、戦力の整ったチームでは自信がモノを言うと主張した。

 ジダン氏はさらに自分の経験も振り返る。「僕にもマドリーでとても難しい時期があった。どうやってプレーしていいかわからない気がするときさえあったんだ。名の通った選手が途方に暮れるなんて想像できないだろう? ところがそれがあるんだ。人生と同じで、そういうときを乗り越えないといけない。いまのフランス代表がまさにそのときなんだろうな。難しいときこそ、何かを作り上げることができる。だから僕が思うには、フランスは予選を突破するだろうし、彼らにとってすごいW杯になるだろう」と“後輩”たちの巻き返しを信じている。

 “98年”OBから必ずしもよく思われていないドメネク監督について問われると、ジダン氏は「いま彼を追い出すのは、いい解決法じゃない」と積極的ではないにせよ支持を表明する。「もしフランスが予選を突破するなら、彼が自分の仕事を成し遂げたということ。追い出すべきときに追い出さなかったのだから、いまとなっては話を蒸し返すべきじゃない。むしろ逆に、彼の、そして彼らのバックアップに回るべきだ」。発言者によっては悪意ととれなくもない言葉だが、しゃべりが達者でないジダン氏であることを考慮すると、言葉通り受け取るしかない。要するに、監督云々よりもまず選手。前大会でそれを身をもって示したジダン氏ならではの発言と言えよう。