先日行われたコンフェデレーションズカップはブラジルの冷や汗ものの優勝で幕を閉じた。ブラジルのドゥンガ監督は、仮に決勝で負けたらクビだろうという悲壮感を持ってやっていたように見えたが、それはブラジルでは当たり前のことで、彼らは常にそういう決意を持って仕事をしている。

それに比べて日本は、W杯最終予選で1位通過が目標と言いながらそれを達成できず、1位との勝ち点差が5になっても、責任を問われることがなかった。チームの成績自体も良くないが、何も追求されなかった空気のほうが心配だね。

両国の文化の違いと言ってしまえばそれまでだが、日本は“求めない”し、アマチュアっぽいところが多い。一番人気のある野球を見てもわかるように、企業スポーツの延長で、何かを問われることがない。その姿勢はプロスポーツとして大いに問題がある。

プロとしての気構えに欠けるのは、たとえばフロントのあり方一つを見てもわかる。クラブのオーナーだったり、協会の会長を、選挙で選ぶことができないことだ。だから仮に責任を追求したところで、中で何をやられるかわからないし、彼らを代えることもできない。そういう構造を変えるとしたら革命を起こすしかないけど、残念ながらそれができる国でもない。
本来なら、監督がベスト4という目標を掲げたのであれば、協会の会長もその目標に自身のクビをかけてW杯本大会に臨むべきだと思うけど、どうもそういう気概は感じられないね。

そういう気構えを持てないのは、マスコミの責任でもある。追求も要求もしないからだ。例えば川淵前会長は、辞める直前に岡田監督の就任を決めたが、現会長にしてみれば、何があっても自分の責任ではないと思っているかもしれない。そのいびつな形をマスコミが追求していればもっと変わっていたはずだけど、それをしなかった。このままの姿勢では、ドイツW杯前後と同じことが起きて、日本サッカーにとって“空白の時間”を過ごすことになってしまうだろう。

マスコミもファンも、もっと追求や要求をしていくことが、サッカー界の活性化につながる。そこが現在の日本サッカー界にもっとも欠けていることであり、プロスポーツにおける最大の要素でもある。(了)

セルジオ越後 (サッカー解説者) 

18歳でサンパウロの名門クラブ「コリンチャンス」とプロ契約。ブラジル代表候補にも選ばれる。1972年来日。藤和(とうわ)不動産サッカー部(現:湘南ベルマーレ)でゲームメーカーとして貢献。魔術師のようなテクニックと戦術眼で日本のサッカーファンを魅了。1978年より(財)日本サッカー協会公認「さわやかサッカー教室」(現在:アクエリアスサッカークリニック)認定指導員として全国各地青少年のサッカー指導。現在までに1000回以上の教室で延べ60万人以上の 人々にサッカーの魅力を伝えてきた。辛辣で辛口な内容のユニークな話しぶり にファンも多く、各地の講演活動も好評。現在は日光アイスバックス シニアディレクターとしても精力的に活動中

●主な活動 テレビ朝日:サッカー日本代表戦解説出演「やべっちF.C.」「Get Sports」  日本テレビ:「ズームイン!!SUPER」出演中 日刊スポーツ:「ちゃんとサッカーしなさい」連載中 週刊サッカーダイジェスト:「天国と地獄」毎週火曜日発売 連 載中 週刊プレイボーイ:「一蹴両断!」連載中 モバイルサイト FOOTBALL@NIPPON:「越後録」連載中