日本酒の輸出が増えている

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   日本酒の輸出が好調だ。国内消費の低迷をよそに2006年の海外輸出量は初めて大台の1万キロリットルを超えた。ワインの「本場」フランスでも「日本酒がボルドーの赤ワインなどと並び、その知名度を上げ始めている」との「論評」も出た。フランス人はそんなに日本酒を飲み始めているのだろうか。

日本酒「買ったことがある」が22%

   フランスのAFP通信は07年10月8日、フランスが日本酒の輸入量世界第11位であることを紹介した上で「日本酒がボルドーの赤ワインやシャンパーニュなどフランスの高級ワインと並び、その知名度を上げ始めている」と報じた。例に挙がったのはいずれも「超有名」なフランスの産地だ。パリのワイン販売店に日本酒が並んでいる様子の写真も添えられている。

   財務省の貿易統計によると、06年の日本酒輸出量1万268キロリットルは01年より1.45倍に増えた。大雑把な計算で、1升瓶で178万本以上も輸出が増えた計算になる。米国がダントツの1位でほかに台湾や「香港」、韓国、カナダ、中国も多い。ヨーロッパでは、イギリスとドイツが上位10位に入っている。11位のフランスも全体のわずか1.2%を占める程度ではあるものの、01年より1.45倍増えている。世界的な伸びと同じ傾向だ。

   フランス人はそんなに日本酒を飲んでいるのだろうか。日本貿易振興機構(JETRO)によると、商品にもよるが輸送費がかさむため日本の値段の3倍程度になることが珍しくない。「基本的には高級品として扱われているようです」。それでもフランスで消費が伸びている背景には、国内に200〜300店あるとされる日本料理店が「ヘルシー」さを売りにブームになっていることがある。高級日本酒を扱い、専門家がアドバイスして販売する店も開業した。07年春のフランス農業見本市で日本区画を訪れた約100人にアンケートした結果によると、1年以内に日本酒を買ったことがある人は22%に上った。日本区画を訪れた人は日本への関心が高いため「高めの数字」と断っているが、なかなかの高さだ。ちなみにトップは醤油の65%だった。

「SAKE(サケ)」でかなり通用するようになった

   日本酒はフランス人にとって、ボルドーの赤ワイン並みの知名度を獲得したのだろうか。100社以上が加盟する日本名門酒会(事務局・東京)にJ-CASTニュースがこう質問すると、「まだそこまではいっていません」という答えが返ってきた。同会の国際流通担当の清常一憲さん(62)によると、保守的な高級フランス料理レストランにも吟醸酒を置く店が出てきた。とは言え「ワイン並みに飲まれるかといえばそうじゃない」。やはり高級日本料理店で「高級」な純米酒や吟醸酒が飲まれているのが中心だ。消費される多くは純米以上のクラスのようだ。

   それでも「この5、6年」で浸透してきたのは間違いない。物産展のような取り組みだけでなく、蔵元のHPの中にはフランス語版も備えたものもあり、情報発信力が強まったことを清常さんは指摘する。「日本のワイン」でも「米のワイン」でもなく「SAKE(サケ)」でかなり通用するようになったと胸を張る。

   人気がある日本酒のタイプについては、淡麗辛口人気が先行したが「こくのある」タイプへも幅が広がりつつある。米国での傾向と似ている。フランスでの人気銘柄を質問すると「上善如水」「真澄」「浦霞」「司牡丹」・・・とすらすら出てきた。最近は「こくのある」タイプの「男山」(北海道旭川)も人気が出てきているそうだ。

   清常さんは「誇り高い」フランス人相手の苦労話も明らかにした。生ガキを食べる際、白ワインより日本酒の方が生臭さを消しておいしい、と納得してもらおうと化学的な話も取り入れながら説得を続けても「カキを食べるときはこの生臭さがいいんだ」と言い張るフランス人も珍しくない。

   とは言え、生ガキや魚介類と日本酒は合うという情報は、「食」に関心が高い人の間に広がりつつある。07年後半にかけて魚介類に日本酒を合わせるフランス人の姿を見かけることが「増えていくと踏んでいます」と自信を見せている。フランスを特別視する訳ではないが、「食にうるさい」印象のフランス人が日本酒を楽しむようになれば、「いろいろといい影響も期待される」。ボルドー並みかどうかはともかく「知名度を上げつつある」のは間違いないようだ。