ベンチで出場機会を待つ"控え組"<br>【photo by Kiminori SAWADA】

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 7月17日、日本代表は夕方からハノイ市内で練習を行なった。ベトナム戦に先発したメンバーは、ランニングやPK練習など約1時間あまりで練習を終了した。控え組の選手は地元クラブと45分2本の練習試合を行なった。試合勘がなかったことや、コンディションの低下などもあり、試合内容は芳しいものではなく、後半に1点を決め、1−0で試合を終えている。2週間近く試合から遠ざかり、大会中は先発組に合わせて、練習メニューも軽くなるだけに、控え組のコンディション調整は、心身ともに難しい。それは先発組以上の難しさがある。

 昨日ベトナム戦後に準々決勝の対戦相手がオーストラリアに決まったこともあり、練習後のミックスゾーンでは、試合に出場した選手よりも川口や坪井、遠藤などドイツワールドカップメンバーへ質問が殺到していた。

 そんな中、控え組で練習試合を終えた坪井は「僕は今、先発組にアクシデントなどがあれば試合に出るという立場だから、そういうことが起きても問題ないようにいい準備をしたい。オーストラリアが相手だからと言って、特別な気持ちもない。もちろん、ワールドカップのことは個人的には忘れられはしないけれど。今は僕個人のことよりもまずは、チームのことを考えている」と話した。

 ハノイ入りして約2週間が過ぎた。大会が始まると、先発組と控え組との区別はどうしても生まれてしまう。若い選手たちの中には、控えの経験が乏しい選手も多いが、こういう大会では、控え組の意識の高さが、チーム全体を左右する。2004年の中国大会では、藤田俊哉や三浦淳宏などのベテランたちが、控え組みをまとめ、士気を高めた。そんなベテラン達の姿に救われたと小笠原満男が語っていたし、同時に、先発で出場した選手たちも口々に、「優勝できたのは控え組のおかげ」と話していたことが思い出される。

 坪井はそのアジア大会には出場してはいなかったが、長く代表で重ねてきた経験上、控え組の気持ちもその重要性も十分認識しているようだ。「言葉でいろいろと言うのは難しい。だからこそ、練習中の態度やそのほかのときの姿で、気持ちを切らせてはいけないこと、どんな状況に置かれてもいい準備をすべきことを伝えて行きたいと思っている」

 坪井だけでなく、前回も控え組の立場ながら、ムードメーカーとして活躍した楢崎も同様の思い出あることには違いない。「自分のできることを精一杯やることが、チームにとってプレスになるはず」と話している。

 ここから、大会はノックアウト方式へと移る。負ければそれで終わってしまう。先発する選手は数多くの日本人選手の思いを背負い戦うだろうし、ベンチでそれを支える選手たちにも同じ思いを背負い戦って欲しい。

―― text by Noriko TERANO from Vietnam ――

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