UAE戦ではフリーの選手を簡単に使ったと語る中村憲剛<br>【photo by Kiminori SAWADA】

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UAE戦で日本代表が得点は、「やろうとしていたサッカーができた」と遠藤が振り返るほど、練習の成果が現れたシーンだった。特に2点目は、ボールを前線でつなぎ、何度もサイドチェンジを繰り返した結果、加地からクロスボールが入った。ワンバウンドしたボールを見事にシュート体制に持ち込み、小さなモーションで得点とした高原の技術の高さが光ったが、パスを繋ぐことで相手を翻弄できたのも事実だ。

「中東勢はボールウオッチャーになってしまう癖があると聞いていたので、サイドチェンジが上手くはまったと思います」と話したのは、中村憲剛。2点目の加地へのパス、3点目PKをとった遠藤へのパスが中村憲剛だった。「フリーの選手を探して、簡単にパスを廻し、そういう選手を使う。パスを出したら、今度はスペースへ出て、ボールを受ける……そういう作業の繰り返しの一環。加地さんも遠藤さんもフリーだったから」と話している。

 実はUAE戦前日、オシム監督は珍しく、DFを立てずに攻撃の連携を確認するような練習を行なっていた。パスを出したあとの選手のポジショニングや、受け手のポジションニングなどを細かく指示していた。「ゲームを左右したのは、どちらが相手を走らせることができたかという点だ。我々の方がボールをより多く動かして、対戦相手をより走らせ、疲れさせることができた。今日の試合は90分どころか、45分でも大変だったと思う。しかしボールは疲れない。気温には関係なく走らせることができる」とUAE戦後オシム監督は語っている。

 相手を疲れさせるためのボール廻しは、こういう気候のサッカーでは重要である。しかし、廻しているだけでは点が取れない。カタール戦では「相手が引いていたので、僕らがボールを廻すことで、疲れさせようと思っていた」と遠藤や鈴木が話していたが、カタール戦でもう少し速く先制点を決め、2点目をとっていれば、終了間際の引き分けということもなかったかもしれない。

「高温多湿が予想されるベトナムでは、パスを繋いだり、遅攻するシーンも必要となるのではないか?」と大会前、鈴木に尋ねたことがある。「もちろんすべてを100%の運動量でやれればいいですけれど、難しいこともある。そういう中で一番大事なのは『どこでスピードアップするか』をチーム全体でわかっていること。サイドチェンジしてから、スピードアップするだとか。スイッチが入ってから仕掛けるスピードが大事だと思うから。だから、頭は常に100%じゃなくちゃいけない。どこで、爆発的なパワーを出すのかということを意識統一すること。そういうところの意思統一や選手の経験値とか、そういうところをアジアカップで出して行きたい」と応えてくれた。

 そういう意味での意識統一ができていたのが、UAE戦だった。しかし、終盤メンバーが代わるとそれが上手くいかなかったことも事実だ。遠藤は試合後、「一時期リズムが悪かったので、どうにかして崩したかった。それは課題だと思う。廻すなら廻す、前に行くなら行くで緩急をつけられればよかった。中途半端になっていたので、その辺りは中盤の選手で意識をもってやりたい」と話している。

 UAE戦翌日の7月14日、日本代表練習では、体調不良と負傷で途中交代した高原と鈴木も先発組と同じメニューを消化していた。予選リーグでもらった、イエローカードは決勝トーナメント前には持ち越されない。ただ、予選リーグ最終戦のベトナム戦で2枚目のイエローカードを受けると、準々決勝が出場停止となる。そのため、ベトナム戦では、現在イエローカードをもらっている阿部、川口、中村たちが欠場する可能性も考えられる。新しい選手たちが、遠藤の言う「やろうとしていたサッカー」をできるのか?非常に楽しみである。

―― text by Noriko TERANO from Vietnam ――

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