西島秀俊と内野聖陽が男性カップルを演じ、食卓を中心に日々の何気ない幸せやほろ苦さを描く、よしながふみ原作の人気マンガを実写化したドラマ「きのう何食べた?」(テレビ東京・毎週金曜深夜0:12〜)。

先週の放送がお休みで、2週間ぶりとなった第9話は“指輪回”。予告映像では、西島演じるシロさんの「俺とお揃いで指輪かってやるって言ったらどうする?」というキラー台詞が流れ、原作ファンもそうでない人も多くの人が楽しみにしていたことだろう。

そんな待望の第9話は、「2人の指輪を買う」という一連のエピソードを通して、日々の何気ない幸せを目一杯感じながら、互いをパートナーとして“大事にする”ことの尊さを、原作に絶妙な味付けをしながらキュン度高めで伝えてくれた。(以下、ネタバレあり)

同期の結婚パーティーに出席し、モテモテのシロさん(西島秀俊)は猛烈に“アレ”が欲しくなる。ろくに食事もできず、家でナポリタンを作ることにしたシロさん。ケンジ(内野聖陽)は美容室の店長(マキタスポーツ)と飲みに行っている為、今日は一人メシ。いつもはシロさんの料理解説(心の声)が入るのだがこの時は無言。美味しいけれどなんかつまんない…。「結局俺が毎日ちまちまと品数多くおかず作ってんのは、ケンジがいるからなんだよな」「あいつの存在ってだいじ…つくづく健康にいいな」。ここでも素直じゃないものの、ケンジの存在の大事さを感じている。

ケンジ(内野聖陽)が帰宅しお腹の音がぐぅ〜。冷凍ご飯のポーションが小さいと思ったシロさん(西島秀俊)は、ケンジの為に梅わさび茶漬けをこしらえる。梅干しの種を取り包丁でたたいて海苔をあぶってもみのりに。そこへ昆布茶をかける。丁寧な仕事に愛情を感じる。そこへ「わぁ〜〜、お茶漬けになってる〜〜!」とちゃんと反応するケンジ。原作通りではあるのだが、「手洗ってくる」と駆け出すケンジの乙女的可愛さや、キッチンでお茶漬けを作るシロさんの元にケンジが駆け寄り、「あとは、もみのりのっけて〜」「美味しそう」「あと切り干し大根な」「うん」という優しい会話は、ちょっとしたドラマの味付け。2人の想い合っている空気感が出ていてとても癒される。

無邪気に「おいち〜い」「家で食べるご飯がいっっちばん番おいしーよ」と口にするケンジ(内野聖陽)に「そっか」と嬉しそうなシロさん(西島秀俊)。ここで、シロさんから例の「俺とお揃いで指輪かってやるって言ったらどうする?」が。大いに取り乱すケンジ。唖然として、食べているお茶漬けの海苔は口から出たまま。そしてここでこのドラマではおなじみ、スーパー中村屋のレトロなBGMのイントロスタート。「あぁぁ…」とむせて落ち着いたかと思うと、涙ぐみ「え。えぇーーーーー!?」と絶叫。


「うっそ、欲しい。超欲しい!」とわなわな。「でもなんで?」と我に返ったところでBGMはストップ。シロさんは「結婚式の二次会で結界がほしい」とケンジにとってはがっかりな理由を明かした。そう、シロさんが結婚パーティーで猛烈に欲しかった“アレ”というのは結界としての指輪だったのだ。テンションがた落ちのケンジのバックでは、またしても中村屋のBGMイントロがスタート。一緒に指輪を買いに行きたいケンジをよそに、シロさんは一人で買いに行くからとケンジに指輪のサイズを尋ねる。が、ケンジは自分の薬指輪のサイズなんて知らないという。そして、じゃあ自分(シロさん)は知っているのかと尋ねられ「わからん」。ケンジがニヤリ。そして3度目の中村屋BGMがスタートするのだった。


このシーンもかなり原作に忠実だが、まずはシロさん(西島秀俊)の頬杖と微笑みの破壊力にノックアウトされ、ケンジ(内野聖陽)の昇天→ふて腐れ→ニヤリからの捲し立てはとにかく楽しい。そこに乗っかる中村屋のBGM3連発。イントロが始まるタイミングや、ラストの「オー レィ!」の掛け声できっちり収まる感じも気持ちがいい。もちろん原作にBGMなどない。ドラマ中にこの中村屋のBGMが流れると、いつも視聴者は「ここでw」と反響があるが、これもドラマならではの素敵な味付けだ。

そして極めつけはラストシーン。きのことツナとカブの葉の和風パスタを美味しそうに食べるケンジ(内野聖陽)を見て目を細めるシロさん(西島秀俊)。ナポリタンの時の一人メシは「なんかつまんなかった」と打ち明ける。ここで完成した指輪を「ハイ、これ」と無造作に渡そうとしたことで一悶着あったが、食事後、ケンジは指輪をはめて眺めながら、

「大事にする
でも、指輪じゃなくって、、、もちろん指輪は一生大事にするよ。けど、その…
大事にするっていうのはさ…
シロさん、大事にするよ。大事にする。」

静かにシロさんは頷き「うん」と返した。

この泣かせるケンジのセリフ「シロさん、大事にするよ。大事にする。」は、原作ではシロさんに直接言ったセリフではない。ナポリタン一人メシの日、ケンジは美容室の店長と飲みに行っていたと先に述べたが、この時店長は娘に浮気がバレたことをケンジに愚痴っている。ケンジは店長に「別れるつもりがないなら、パートナーは大事にしなよ」と諭す。そんな飲みの席の帰り道、自分のパートナーであるシロさんを思い、「シロさん、大事にするよ。大事にする。」と心の中で決意しているのだ。

指輪のエピソードが原作で登場するのはもう少しあと。店長の浮気相談と、今回の指輪のエピソードの間には小日向さんやジルベール航との出会いが挟まっていたりするから驚きだ。つまり、原作に忠実でありながら、エピソードをうまく繋げ合わせたり組み替えたりしながら、ドラマ「きのう何食べた?」は構成されている。そこにはなんといっても脚本の妙がある。

第9話も「キュンとした」「最高にほっこり」「泣ける……。そして笑える」「お互いを思いやるってこんなことよね」「大切な人と美味しいご飯を食べる、なんてことない日常のかけがえのなさがジワジワ溢れてくる」などと、様々なポイントで視聴者を満足させた「きのう何食べた?」。「神回」と毎週のように声が上がるのは、魅力あふれる原作のもと、脚本・演出・演者がうまくハマり、さらなる魅力を生んでいるからではないだろうか。今クールも佳境。ロスを心配する声が上がる中、今後どのエピソードをどのような形で見せてくれるのか、楽しみだ。


©「きのう何食べた?」製作委員会