スマホ用スタイラスの種類や選ぶポイントを紹介!

昨年秋頃から、筆者はスマートフォン(スマホ)用にスタイラス(タッチペン)を使い始めました。そもそもスマホゲーマーでもある筆者が「今更なの?」と言われそうですが、パズルゲームやシーティングゲームなども今までは指先で操作していたのです。

しかし某ゲームの操作で指先での操作に限界を感じ(あまりに高速で操作するため指紋が消え始めた)、スタイラスを使用し始めたのですが、そこからが長く遠いスタイラス選びの始まりでした。

タッチ感度、導電素材、重さ、軸の長さや太さ、重心バランス、耐久性、ランニングコスト、デザイン、汎用性……。スタイラス1本に求められる要素がこれほどまでにたくさんあるとは、実際に使うまで気が付きませんでした。それほどまでにスタイラス選びの奥は深いのです。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する「Arcaic Singularity」。今回はいつもと少し趣向を変え、スマホ用スタイラスの種類や選ぶポイントなどを解説します。


たくさん種類があるスタイラス、どれを選べばいいの?


■スタイラスは種類が豊富
まずはスタイラスの種類です。現在のスマホはほぼ全てが静電容量式タッチパネルを採用していますが、静電容量式タッチパネル用のスタイラスだけでも実に多種多様です。

古くからあるのが導電ラバーを採用したもので、柔らかいゴムのような素材で画面を操作するタイプです。このタイプは汚れにも強く安価で扱いやすい特徴がありますが、ラバー素材ゆえの耐久性の低さや、導電性があまり高くない製品が多く、画面に押し付けるようにして操作しないと反応が悪い場合が多いデメリットもあります。

その感度の低さから画面保護フィルムとの相性も悪く、とくに厚みのあるガラスフィルム系ではほとんど反応しない製品などもあるため、ラバータイプの製品を購入する際は画面保護フィルムとの相性を必ずチェックしましょう。


導電ラバータイプは100円ショップなどでも容易に手に入る


現在最もメジャーなのが導電繊維タイプです。ラバーキャップのような弾力のある素地に金属素材などを混ぜた導電繊維を被せたもので、比較的感度が良く、保護フィルムを使用していても問題なく使える製品が多いのが特徴です(全てではないのでこちらも相性を確認しておきたい)。

ただし、金属繊維や金属蒸着させた繊維が織り込まれているため、柔らかな画面保護フィルムでは傷が付く恐れがあります。画面保護フィルムを使用するのであればガラスフィルム系を使用した方が良いでしょう。


導電繊維タイプはゲーム用として広く普及した


感度を重視する人にオススメなのが植毛型導電繊維タイプです。上記の導電繊維タイプと似たような構造ですが、繊維を布素材として織り込むのではなく素地となる素材に植毛しており、細かく起毛しています。

この起毛が感度をさらに向上させており、ほんの僅かに毛先が画面に触れるだけでも反応してくれます。

難点は、その製法ゆえに耐久性が若干低い点です。ゲームなどで激しく画面をこするような扱い方をすると植毛された繊維が抜け落ちて反応が悪くなったり、画面に繊維が飛び散るといったデメリットがあります。製品によって耐久性に差異はあるものの、布状の導電繊維タイプよりは耐久性が落ちる傾向にあります。


画像でも分かる通り、起毛タイプはホコリが付きやすいという難点もある


イラストレーターや画像のレタッチをメインとする人に好評なのがディスクタイプです。スタイラスの先端部が自由可動する円盤状になっており、その中心部が接触部分として感知される仕組みで、ラバータイプや導電繊維タイプではできない精密な作業が行なえます。

難点は、その構造ゆえにゲームやフリーハンドでの筆記には全く向かない点です。素材がプラスチックおよび金属素材であるため、激しく操作すると画面を傷つける恐れもあり、ガラスフィルムの使用は必須です。

また可動部がある構造上耐久性もあまり高くなく、先端部のチップ交換を前提とした運用が基本となります。


ディスクタイプは用途が限られるためメジャーではない


ディスクタイプと同様にイラスト制作やフリーハンドでの筆記に向いているのが電池式スタイラスです。充電式のものが多く、スタイラスの先端が鉛筆やボールペンのように細いため、違和感なく精密作業が可能です。

難点は本体価格の高さと充電が必要なことです。その他のスタイラスは本体が1,000円前後と安価ですが、電池式は3,000円前後と高く、ちょっと試しに使ってみるとか、類似品をいくつか購入して自分にあった製品を探してみる、という使い方に向いていません。

また充電が必要な点も意外と面倒です。最近の製品は自動電源OFF機能などを搭載していますが、それでも連続使用で10〜12時間程度の物が多く、日常用途であれば毎日の充電が必須です。

さらに、先端部が硬いことからディスクタイプ同様にガラスフィルムなどが必須となり、ゲーム用途にはあまり向きません。

■選ぶポイントも多種多様
このようにたくさんの種類があるスタイラスですが、選ぶポイントも当然多様です。素材による違いとその用途選択は前述した通りですが、スタイラス自体の太さや重さもとても重要です。

一般的なペン型スタイラスの場合、軸の太さは9mm前後が多いですが、用途によってはもっと細いほうが良い場合や、敢えて太い軸のほうが良いこともあります。

例えばゲーム用途では、ゆっくりとした操作で良い場合は視界の邪魔にならない細めの軸のものが向いていますが、高速で動かす用途の場合、しっかりとグリップできる太めの軸のほうが指への負担が少なくなります。


軸の細いスタイラスの場合、持ち方次第では指が重なり爪が食い込むことがある



軸の太いスタイラスなら指が重ならず、しっかりとグリップできる


筆者は主にゲーム用途で使用しており、激しく動かすことから思わず指先に力が入ってしまうことが多く、当初細い軸のスタイラスを使用していたために指先に爪が食い込み、タコができてしまいました。

持ち方や使い方は人によって千差万別であるため、どの太さが良いとは一概に言えません。持ちやすさや使いやすさ、そして長く使った時の疲労度や指への負担こそ、使ってみないとわからない部分です。そのためにも、スタイラス本体はあまり高額ではないほうが色々試せて良いかもしれません。


写真では分かりづらいが、人差し指の腹の部分にタコができてしまっている


先端部が交換できるか、また交換品の価格なども重要なポイントです。

例えば導電ラバータイプや植毛型導電繊維タイプは耐久性に若干難点がありますが(とは言え、一般的な使用方法ならどの製品も数ヶ月は使える)、チップ交換が可能であればその難点もカバーできます。しかし交換用チップが高コストであっては意味がありません。

交換用チップの価格も製品や素材によって様々で、2個入りで2000円近くもするものもあれば500円程度のものもあります。また交換用チップを購入しながら長く使うことを前提とするなら、交換用チップの供給が安定しているメーカーを選択することも大切です。


チップ交換ができない場合、スタイラスごと買い換えなくてはいけない


現在筆者がゲーム用に最も愛用しているスタイラスは、三菱鉛筆製のスタイラス付きボールペンなのですが、その交換チップは2個入りで実売300円程度です。

植毛型導電繊維タイプなので頻繁な交換が必要ですが(前述の通り一般的な利用なら数ヶ月持つが、筆者の場合1週間に1個ペース)、導電性の高さや滑りの良さからの使いやすさ以上に、交換用チップの破格の安さと三菱鉛筆というメーカーの信頼性や供給の安定性からこの製品を選択しています。

スタイラスによっては3本入りで1,000円といった破格の安さのものもあり、敢えてチップ交換ができなくても問題ない、という考え方もあります。このあたりも導電素材や自分の使い方に合わせて選択すると良いでしょう。

■スタイラスで「デキル社会人」に?
最後に、筆者が小さなライフハックとして推しておきたいのが「仕事でスマホを使用する際にスタイラスを用いる」というものです。

指先で簡単に操作できるのがスマホの良い点なのに、なぜわざわざスタイラスを使う必要があるのか、と疑問に思う人も多いでしょう。答えは「頭の固い上司を納得させるため」です。

この春から新社会人となった人も多くいると思いますが、会社に入ってまず言われることは「メモを取れ」ではないでしょうか。会社として業務中のスマホ使用を禁止している場合はともかく、最近では紙の手帳を持ち歩かずにスマホのメモアプリに書いたり、時には仕事の手順などを写真撮影して終わり、といった人も増えているようです。

しかしデジタルネイティブ世代ではない上司の中には、たとえ会社支給のスマホであっても、それを片手でいじりながら仕事をしている姿を忌避する人もいます。そこで意外と有効なのがスタイラスの利用なのです。

上司が求めているのはメモを取っているかどうかではなく「メモを取っている姿勢」だったりするので、スマホにスタイラスでメモを取っている姿を見せるというのは、相手を安心させるという意味では非常に効果があります。少なくとも片手でポチポチといじっているよりは、遊んでいるようには見えないでしょう。


バカげた話だと笑われるかもしれないが、これだけで本当に安心する人々がいるのだから、合わせておくに越したことはない


筆者が純粋なスタイラスではなくスタイラス付きボールペンを愛用している点も仕事と関係があります。

普段から取材で飛び回ることの多い筆者にとっては、やはり紙のメモ帳も使用頻度は少なくありません。紙で配布された資料へ注釈を書き込むことも多々あります。そういった場合にも利用できるのがスタイラス付きボールペンであり、一石二鳥の便利文具として活躍しているのです。

■時代が求めたスタイラスの復権
このように、スタイラスには実にさまざまな種類と用途があります。デザイン1つ取っても、おしゃれで遊び心に富んだものからビジネス用としても通用する質実剛健なものまであります。

スマホ自体が大型化していることもスタイラス利用を推す大きな理由の1つです。現在のスマホは6インチクラスやそれ以上の大きさが主流となり、もはや5インチ前後のスマホは「小型」の部類です。手が小さめの人や小学生〜中学生には、片手で操作できないほど大きくなっています。

スマホの大型化は大画面を求める消費者の声を反映した進化ですが、その一方で片手操作を諦める必要が出てきました。また大画面で動画やコンテンツを楽しむ用途が重視された結果、画面が皮脂で汚れることへの抵抗感も強まる傾向があり、ここでもスタイラスの使用がメリットとなりつつあります。


サムスン電子製「Galaxy Note9」のように、スタイラスを内蔵するスマホも増えつつある


その昔、世の中にまだiPhoneのようなスマホが存在もしなかった頃、筆者はPDAやWindows Mobile端末でスタイラスを使用していました。

当時のタッチパネルは感圧式がほとんどで、単に「硬いもので画面を押す」必要があったからですが、iPhoneの登場と静電容量式タッチパネルの普及によって、スタイラスを使用する文化も一時的にほぼ消え去った時代がありました。

あれから時代は流れ、スマホの大型化や用途の多様性からスタイラスが再び脚光を浴び始めているように感じます。皆さんも指先でのスマホ利用に限界や不満を感じ始めていましたら、スタイラスを試してみてはいかがでしょうか。


自分に合ったスタイラスを見つけよう


記事執筆:秋吉 健


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