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 ルノーは、同社の社内では背任行為や不適切な経理処理が確認できていない、としてゴーン容疑者のCEO職を解いていない。恐らく日産と同様の行為は、ルノーでは行っていない。何故なら、ルノーはフランス政府が筆頭株主の準国営企業のような立ち位置にある。「違法でない」ことに非常なこだわりを持つ人物が、自分の力量を超えることが明らかなフランス大統領の目の届くところで、セコイ振る舞いをする筈がない。18年のルノーCEO任期更新に当たって、報酬減額をゴーン容疑者に受け入れさせた怖いお目付け役なのだ。

【前回は】日産の西川社長グループとゴーン容疑者との、瀬戸際の死闘が始まった! (5) ほころびた証言

 日産はゴーン容疑者自身が犯すべからざるカリスマとして頂点に君臨していた。謀反者が出現することなど露とも疑っていないから、逮捕事実となった行為や、それ以外の不適切な行為が思うがままに出来た。三菱自動車は新しい仲間であり、ややこしいことはまだしていないかも知れない。

 フランスの通信社であるAFPは、オランダにあるアライアンスの統括会社が、ある幹部に対して正規の報酬以外の多額の支払いをしていた伝えている。オランダにある統括会社にはアライアンスの目が届きにくい。ゴーン容疑者とケリー容疑者の2名のサインがあると伝えられていることが事実であるとすれば、どういう意味を持つ事案であるかは今後徐々に見えて来るだろう。

 事実かどうかを確認する術はないが、取り調べを受けているゴーン容疑者は取調官に「法律を知っているのか?」と発言をするなど、傲岸な姿勢を続けているらしい。世界を股にかけてのし上がって来た来た人物である。今回の裁判が今までのキャリアを台無しにして、今後の進路を著しく狭めることは何よりも本人が一番認識している。東京地検特捜部の目論見が外れて無罪となっても、日産に復帰することはないだろうが、莫大な慰謝料を要求してくるはずだ。その日は西川社長グループにとっては悪夢の日である。一蓮托生で日産を去る以外に選択肢はない。その意味で「双方にとって瀬戸際の死闘である」。

 ケリー容疑者は保釈に際して(1)定められた日本国内の住所に住んで(2)海外への渡航は禁止され(3)3日以上の旅行は事前に裁判所の許可を得ることと(4)日産の関係者に接触しない、という条件が付されていた。脊椎に持病を抱えて体調が思わしくないことも考慮されていたかも知れない。

 15日、東京地裁はゴーン容疑者の保釈請求を棄却して、ケリー容疑者との対応の違いを明確にした。証拠隠滅や逃亡の恐れがある容疑者と見なされたということになる。