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先日、森保ジャパンの発足以来、初めての公式大会となるAFCアジアカップが開幕した。

2大会ぶり5度目の優勝を目指すFIFAランキング50位の日本代表は、同127位のトルクメニスタンと今日9日対決する。

◆「戦術の話をするのは5分程度」

昨年のロシアワールドカップ以降、キャプテン長谷部誠選手の代表引退や森保一監督の就任など大きな変革期にあるサッカー日本代表だが、試合を観戦していると、素朴な疑問を浮かべるサッカーファン、視聴者の方は少なくないようだ。

たとえば、ハーフタイム。

前後半のピッチ上の試合展開は見えているが、ハーフタイム中の選手は何をしているのか知っているだろうか? 当然そこにはテレビカメラは入れない。

前半の振り返りと、後半の作戦会議をしているのは”なんとなく”理解できるが、実際のところはどうなのだろうか。

そこで本記事では、サッカーに関するあらゆる疑問について専門家に徹底的に解説してもらう。

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今回解説してもらうのは、テレビ朝日サッカー解説の松木安太郎氏だ。

――早速質問です。45分の前半戦を終え、15分のハーフタイム中、選手やコーチは何をしているのでしょうか? やはり、前半戦の振り返りと後半戦の作戦会議をしているんですよね?

松木氏:「うーん……それもそうですが、もっと重要なことがあるんですよ」

――それは何でしょうか?

松木氏:「まずは、各選手個人がリフレッシュすることが重要です。選手たちは前半45分目いっぱい動いて戻ってくるわけですからハーフタイムに入り、いきなり戦術の話をするケースはほとんどありません。例えば、熱中症になりやすい6〜8月の夏のシーズンは何より水分補給とクールダウンが必要です。水のシャワーを浴びてリフレッシュする選手が多いですね。逆に冬のシーズンは、身体を冷やさないために温水シャワーを浴びる選手もいます。後半に向けて体温のコンディションをコントロールすることが大切なんです」

――優先順位で言えば、監督の指示を聞くのが先じゃないでしょうか? バレーボールの中継もよく、選手が水を飲みながら監督の指示を聞いていますし…。

松木氏:「ユニホームを着替えて、水分補給して落ち着いてから初めて戦術の話に耳を傾けます。結果、監督やコーチが選手たちに戦術の話をできるのは残りの5分程度になります」

松木氏いわく、「もちろん、負けている場合は戦術の話がもう少し長くなりますが、Jリーグでも日本代表でも、まず選手はシャワールームに向かっていく選手が多く、リフレッシュを優先する」そうだ。

「特に、元日本代表の遠藤保仁選手(ガンバ大阪)は必ずシャワーを浴びて着替える選手として有名でしたね」

◆「ハーフタイムを終えた選手のユニホームに注目」

シャワーを浴びてリフレッシュした選手全員が集まり、ようやく輪になって監督の指示を聞くと思いきや、それも違うという。

「そのようなシチュエーションは稀ですね。代表チームの場合はグループが分かれています。ディフェンスチームはディフェンスのコーチに、キーパーはキーパーコーチに……といったように各グループに分かれて話を聞くことが多いんです」(松木氏)

これは、各グループで戦術の話をした方が限られた時間内で密なコミュニケーションが取れるからだそう。さらに、この最中に選手たちはゼリー状のドリンクなどを飲みながら栄養補給をしたり、ケガを抱えている選手はケアを受けるという。

ハーフタイム中はとにかく忙しいのだ。

「時間のロスは1秒でも減らしたいわけです。監督は事前にボードに戦術を描いて準備しておきます。とにかく時間がないので選手のリフレッシュを優先し、残り時間で戦術を詰めるというわけです。沢山のことを伝えて共有する時間はないですから、全体で共有する修正点や戦術ポイントは2つ、3つがせいぜいですね」(松木氏)

松木氏曰く、今月開幕したAFCアジアカップでは「ハーフタイムを終えた選手のユニホームにぜひ注目してください」とのこと。

「汗がついていない乾いたユニホームに変わっているはずですよ。シャワーを浴びているので髪型も変わっているかもしれません」(松木氏)

意外なポイントに注目すると、試合以外の時間もサッカー中継を楽しめるはずだ。