40歳以下の若手医師はどんな環境で働いているのか。40歳以下の医師600人にアンケート調査を行ったところ、労働時間では50%近くが「1日平均10時間以上」で、約17%は「12時間以上」だった。また出身大学別に給与を聞いたところ、東大や京大の医学部出身者より、地方国立大学や私立医学部出身者のほうが高い給与だった。詳細を報告しよう――。(後編、全2回)

※本稿は、『プレジデントFamily 医学部進学大百科2019完全保存版』の記事の一部を再編集したものです。

医療が発達する今、医師の勉強は受験期だけでは終わらない

雑誌「プレジデントFamily」編集部は2018年9月、40歳以下の現役医師600人(※男性485人、女性115人、開業医を除く)を対象にアンケート調査を実施した。

【医師に直撃質問その4】

医師になっても「勉強」しなければならないのか?

「これまでの人生で最も勉強がハードだった時期は?」との質問には、過半数の医師が「大学受験時」と回答したが、研修医になってからのほうが勉強している、という医師も約13%いた。

「専門分野の知識の習得のため毎日テキストや文献を読む」や「診断がつかない患者さんがきたら、似た症例がないか、あらゆる手を使って調べ、勉強」などの回答もあり、診察時間外に机に向かっている時間が長いということだろう。頭が下がる。医療が発達する今、医師の勉強は受験期だけでは終わらないのだ。

英語に関しても関心が高い。英語を使うのは、「論文を読む時」(88%)、「論文を書く時」(49%)が多い。具体的には「毎日パブメド(米国国立医学図書館が運用している科学論文のデータベース)を見ている」や「週1本以上は英語論文を読む。通勤中(朝晩各15分ずつ)は英語の勉強。年5本程度英語論文の執筆」といった意見もあった。

留学経験者は意外に少なく2割未満だった。

「もし、留学したい場合は専門医取得後がベスト。それまでは医師として一人前になるための研修で海外へ行く時間はありません」(中村氏)

また、「臨床医として働きながら、研究している」医師が約4割いた。

■半数が1日10時間以上働き、平均年収は約1222万円

【医師に直撃質問その5】

労働時間、休日日数、給与に不満はないか?

医師の労働時間はどれくらいか。1日平均「10時間以上」が50%近くもいた。いわゆる「過労死ライン」を超える「12時間以上」も約17%だ。

脳神経外科、外科、整形外科が1日の「12時間労働率」が高い診療科ワースト3だ。夜勤を含む時間とはいえ、かなりの長時間勤務で疲れもあるはずだ。

「仕事とプライベートの時間の折り合いがつかず困ったことは?」と聞くと、こんな実例が挙がった。

「ライブのチケットを買っていたが、緊急オペで行けなかった」(34歳、男性、産婦人科)
「子供と遊ぶ時間が取れないこと」(36歳、男性、内科)
「プライベートな時間が取れても疲労で憔悴している」(35歳、男性、外科)
「親族の葬儀に出席できなかった」(35歳、女性、内科)
「家族には文句ばかり言われます」(37歳、男性、リハビリ科)
「研修医時代は、いつも電話が離せず、美容院や歯医者すら行けなかった」(37歳、女性、内科)
「誕生日に当直、年末に当直結婚記念日に当直」(35歳、男性、整形外科)
「残業の概念がないのが問題。プライベートのときも学会準備や勉強をする必要がある」(31歳、男性、皮膚科)

全体の3分の2の医師が現在の労働時間に「満足(「まあまあ満足」を含む)」と回答している。心身ともにタフで、献身的なタイプでないと務まらない職業と言えるだろう。

平均年収は約1222万円。調査は平均年齢34.9歳(勤務医)。診療科別の年収の満足度では、精神科、眼科、病理科がベスト3だった。「当直勤務も残業も少なく、生活の質を保ち、プライベートの時間も確保しやすい」(中村氏)。一方、前出の労働時間が長い診療科は満足度が低かった。

■東大の医師は地方医大卒より薄給(出身大学別年収ランキング)

では、出身大学別年収(平均)はどうか。調査サンプル数が少ない大学もあるので、注意が必要だが、1位は東京医科歯科大で1850万円、2位は獨協医科大で1571万円、3位は産業医科大で1533万円だった。

そのほか高知大(5位・1483万円)、香川大(7位・1469万円)、山梨大(9位・1433万円)、岐阜大(10位・1427万円)など、地方の国立大学が上位に目立った。

「都会で働く医師と地方で働く医師では、医師不足の地方のほうが高収入です。地方大学が上位なのは、地元で働く医師が多いということでしょう」(中村氏)

さらに平均年収を出身大学の「設立グループ」で分類してみると意外な事実がわかった。設立年が、最も古く伝統があり偏差値も高い「国公立旧帝大(東京大、京都大、大阪大、名古屋大、北海道大、東北大、九州大)」が8つに分類したカテゴリーの中で最も低く、平均1107万円だった。これは、比較的給与が高くない大学病院に勤務する人が多いからだと思われる。

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(プレジデントFamily編集部 取材協力=医学部専門予備校YMS アンケート協力=m3.com)