スタン・リー死去、95歳。スーパーヒーロー界のスーパーレジェンド
11月12日、マーベル・コミックスの伝説的クリエーター、スタン・リーが緊急搬送先のロサンゼルスの病院Cedars-Sinai Medical Centerで亡くなりました。95歳でした。

スタン・リー、本名スタンリー・マーティン・リーバーは1922年生。マーベル・コミックスの名だたるスーパーヒーローや敵役たちを多くのアーティストとともに創造し、アメリカン・コミックスの黄金時代、あるいは「シルバーエイジ」を築いた原作者・編集者・脚本家・発行人です。

近年はマーベル映画の大成功から、特にアメコミに詳しくない人にも「ハリウッドのスーパーヒーロー映画を観ていると何かとわざとらしい端役で出てきて妙に目立つサングラスのお爺ちゃん」として認識されていますが、原作者として創造したキャラクターは例えば「スパイダーマン」「X-MEN」「アイアンマン」「マイティ・ソー」「ファンタスティック・フォー」「ドクター・ストレンジ」「ブラックパンサー」「アントマン」「デアデビル」そして「シルバーサーファー」等々々。

アーティストとの共同作業とはいえ、全部同じ人が原作者だったの???と驚愕するレジェンド中のレジェンドでした。

コミックス界、広くエンタテインメント界への影響、功績はとても書ききれませんが、これほど多くのキャラクターたちと物語がいまなお支持される理由には、それまで文字通りの完璧超人として描かれることが多かったスーパーヒーローたちを、欠点もあり人間的な悩みを抱える存在としたこと、差別や偏見といった現実の問題を扱い、コミックスを「お子様向け」に留まらないエンタテインメントに発展させたことが挙げられます。

つい最近はプレイステーションのゲーム版が大ヒット中のスパイダーマンも、超人的な力を得ながら悲劇を止められなかったことに苦しみ、ガールフレンドとの仲や家賃の心配が絶えない青年ピーター・パーカーの造形こそが共感を呼び、いまなお作品が作られ続ける理由です。

X-MENも、超人的な能力を持って生まれたミュータントたちが敵味方に分かれて争う筋書きながら、「善」のミュータントたちは守るはずの人類から異分子として迫害され、「悪」のミュータントは人類の不寛容と暴力からミュータントと人類自身を守ることを旗印に掲げます。

(マーベル映画でコミックスにも興味を持ったけれとどこから読めばよいのか分からない、という問いにはきっとスーパーヒーロー好きの数だけおすすめがあると思われますが、スタン・リー自身が特に思い入れが深かったといわれるキャラクターで、映像化にあまり恵まれていないものとしてはシルバーサーファーがいます。ファンタスティック・フォーの映画に出ていた、全身銀色ツルツルで空をサーフィンするペプシマンみたいなアレです。単独シリーズ『シルバーサーファー』の初期は特におすすめ。)

スタン・リーは晩年も精力的にクリエーターとして活動を続け、またマーベルの大御所としてプロモーションやイベントにも積極的に活躍しており、日本版コミコンにもゲストで来日していました。

95歳のご高齢とはいえ、ごく最近も映画『ヴェノム』のカメオ出演で元気なすがたを見せていたばかり。これからも続くマーベル映画を見るたびに、そういえばあのお約束がなかったことに気づいて悲しくなってしまいそうです。

レジェンドを悼む Marvel.comが掲げたスタン・リー本人の言葉は、

"I used to be embarrassed because I was just a comic book writer while other people were building bridges or going on to medical careers. And then I began to realize: entertainment is one of the most important things in people's lives. Without it, they might go off the deep end. I feel that if you're able to entertain, you're doing a good thing."

(以前、ほかの人達は橋を作ったり医療の道に進んだりしているのに、わたしはただの漫画書きなのが恥ずかしいと思っていたことがある。だが気づいたんだ。楽しむことは、人生で一番大事なことのひとつだと。楽しみがなければ、頭がどうかしてしまうかもしれない。誰かを楽しませることができるなら、良いことをしているのだと信じている。)