CNNテレビといえば米国の主要ニュースメディアのなかでも一貫した反トランプ傾向で知られてきた。そのCNNが10月上旬の報道で、「トランプ大統領の勝利」という表現を用いて同大統領の業績に初めて前向きな評価を表明した。トランプ大統領には相変わらず深刻な欠点や問題があるものの、米国や世界を変える変革を実行していることは認めるべきだ、という論調だった。米国政治の現在の姿を伝えるこのCNNの評価は、日本側でも注目すべきであろう。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

保守派の長年の夢がついに実現

 CNNは10月6日、最近の同大統領の業績を分析し、高く評価するニュース解説を放映した。CNNのベテラン・ジャーナリストでホワイトハウスを長年、担当するスティーブン・コリンソン記者による報道と評論だった。

 この報道は「トランプ氏はいまほど大統領としてうれしい時間を過ごしたことはないだろう」と記し、トランプ大統領は異端な言動も多く論議を呼ぶことが頻繁だとはいえ、「この数日間で少なくとも2つの政治的な足跡を残し、突然の歴史の高まりをみせた」と述べていた。

 コリンソン記者はトランプ大統領の足跡としてまず以下の2点を挙げていた。

・最高裁判所の判事に保守派のブレット・カバノー氏を任命することに成功した──歴代の共和党政権は最高裁判事9人の過半数を確保することを40年以上も目指してきた。その目標をトランプ大統領は達成した。

・10月5日に発表された米国政府の経済統計で、失業率はこの49年間で最低の3.7%となった──この数字は経済成長率などを含めていまの米国経済が非常に好調であることを実証した。トランプ政権は大規模な規制緩和や大型減税によって米国経済を近年では稀なほど好転させた。

 以上の2点を強調したCNNの報道は、「この結果、トランプ大統領は4週間後に迫った中間選挙に向けて、有権者たちに共和党の実績を十分に訴えることができるだろう」と論評していた。

 米国では、最高裁の9人の判事たちの政治的、イデオロギー的な傾向は現実の政治にも重大な影響を及ぼすとみられてきた。政治の世界で決着のつかない重大案件が最高裁にもちこまれ、その判断の結果が現実の政治を動かすことが多いからだ。たとえば2000年の大統領選挙では、共和党のジョージ・ブッシュ、民主党のアル・ゴア両候補の得票が僅差すぎて選挙管理委員会の段階では確定できず、最高裁の判断を仰いで決定された。

 最高裁判事の政治傾向は基本的に保守とリベラルに分かれており、判決ではその政治傾向が複雑に錯綜する。その色分けは簡単ではないが、一部の学者たちは保守派判事が確実に多数派を占めたことは1930年代以来初めてだと指摘する。リベラル派の判事が1970年代以来、ずっと多数派を占めてきたという見解をとる学者も少なくない。

 現実の政治の世界では、共和党の歴代の大統領と議員たちが「最高裁の保守化」に全精力を傾けてきた。それが、トランプ政権になってやっと実現したわけだ。

 保守派のなかには、「保守本流勢力の年来の悲願だった最高裁の保守化が、その本流のブッシュ父子大統領らではなく、保守のなかでも異端のトランプ大統領によって実現されたことは歴史の皮肉だ」という反応もある。だが、CNN報道は今回のトランプ大統領の最高裁に関する措置を「保守派の長年の夢を実現した」と評していた。

トランプ政権の政策が「歴史の転換点」に

 さらに、今回のCNN報道で注目されるのは、トランプ大統領のごく最近の他の実績をも前向きに伝えている点である。コリンソン記者は、「最高裁判事任命と経済の好調のほかにも、トランプ大統領の統治に実質的な成果を与え、論議はあるものの歴史の転換点となるような動きがあった」と述べていた。

 同報道はその実例として以下の点を挙げていた。

・トランプ政権は最近、メキシコ、カナダ、韓国との間で自由貿易の協定を改めることに成功した。

・トランプ政権は中国と厳しく対決する新政策を打ち出した。ペンス副大統領が10月4日にワシントンで演説して公表したこの対中政策は、中国を米国の国益や価値観を傷つける潜在敵国として特徴づけ、中国に対抗して抑止する措置を明らかにした。

・トランプ政権は10月4日、「国家反テロ戦略」を発表し、イランの国際テロ関与を糾弾し、イスラム過激派の「イスラム国」撲滅の成果を強調した。

・トランプ政権は、違法滞在外国人に対する一連の措置により米国への外国人入国者の数を大幅に減らし、内外からの反対こそあれ、移民・難民・不法入国者に関しての新しい規範を示した。

 このようにCNNとしては信じられないほどトランプ大統領を高く評価していたのである。

日本では伝えられない政策の実態

 この報道は、トランプ大統領が9月下旬に国連総会の演説で自らの実績を自慢して冷笑を浴びたことを結びに取り上げ、「トランプ氏は確かに誇張もしていた」と述べたうえで以下の点を総括として語っていた。

「トランプ政権はなお内部の混乱や政策の矛盾など問題点こそ多いが、米国の国のあり方を政治面、経済面で変革する重要な出来事が同政権下のワシントンで進んでいることは、もはや否定できなくなった」

 日本のマスコミや識者の多くはトランプ大統領の放言やマスコミとのやり取りばかりに目を奪われ、政策の実態をまずみない。CNNの認識は、そうした態度に教訓となりそうである。

筆者:古森 義久