記憶に残るガラケーたち

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現在の日本の携帯電話の市場、店頭などの売り場では、スマートフォン(スマホ)一色となっている。

携帯ショップや量販店の展示で従来型携帯電話(フィーチャーフォン、ガラケー)に見えても、中身はAndroidを搭載した「ガラホ」「スマケー」(ガラケーとスマホを合わせた造語)と呼ばれるものだ。

現状では中古市場や中古ショップの売り場でもない限り、純粋なガラケーに出会うチャンスはない。
とはいえ、日常生活で大事にガラケーを利用している人は、まだ多くいるのも事実だ。

スマホが当たり前の今だからこそ、かつて人気を博した「記憶に残るガラケー」を振り返ってみたい。

DP-211(パイオニア製)

DP-211

1996年発売のデジタルホン(現在のソフトバンク)向け携帯電話。PDC(第2世代移動通信システム:2G)に対応し、国内の携帯電話としては初めて全面液晶タッチパネルに対応したモデル。

タッチパネルは、スマホでは当たり前だが、当時のガラケーでは珍しく、DP-211だけが全面タッチパネルを搭載し、注目を集めた。また、パイオニアが携帯電話を作っていたということも、今や覚えている人の少なくなってしまった。


J-SH04(シャープ製)

J-SH04

2000年発売のジェイフォン(現在のソフトバンク)向け携帯電話。PDCに対応し、国内の携帯電話としては初めてモバイルカメラを搭載したモデル。

モノクロ液晶からカラー液晶化の波が押し寄せる中、1999年発売の「J-SH02」からカラー液晶を搭載したシャープが、本体の背面にカメラを搭載してきたのがこのJ-SH04だ。

当時のジェイフォンは、写真付きメールを略した「写メール」というキャッチコピーでキャンペーンを展開。
その後、サービス名称にも「写メール」という言葉が使われるようになり、ユーザーの間では「写メ」とさらに略されて定着した。

現在でも、携帯電話(スマホ)のカメラで撮影することを「写メ」と言うが、この「写メ」はもともと「写メール」からきているのだ。


N502it(NEC製)

N502it

2000年発売のNTTドコモ向け携帯電話で、正式名称は「デジタル・ムーバ N502it HYPER」。PDCに対応したmova端末。元祖折りたたみのNECが、当時の液晶ディスプレイ最大サイズとカラー液晶対応を実現させた折りたたみモデル。

当時は圧倒的なシェアを誇っていたNTTドコモで、かつ折りたたみ先駆者として人気が高かった「Nのケータイ」として大人気を博した。


INFOBAR(三洋マルチメディア鳥取製)

INFOBAR

2003年発売のKDDI向け携帯電話。CDMA 1X(第3世代移動通信システム:3G)に対応したモデルで、型番はA5307ST。

2002年のビジネスシヨウでプロトタイプの「info.bar」が参考出展された。
その後、「au design project」の第1弾製品として発売されることになった。
デザイン先行で、後に製造するメーカーが決まり無事に製品化されたモデル。

折りたたみケータイが全盛の中、ストレートタイプにも関わらず大ヒットした。
デザイン力の高い携帯電話が売れることを証明した。

一方で、INFOBARの衝撃や人気を超えるほどのプロダクトが登場することはなく、スマホ時代になっても「au design project」で開発された製品の中では、唯一INFOBARを継承するモデルが作られた。


AH-K3001V(京セラ製)

AH-K3001V

2004年発売のDDIポケット(現在のソフトバンク・ワイモバイルブランド)向けのPHS端末。日本国内の携帯電話・PHSとしては初めて「Opera(オペラ)」ブラウザを搭載したモデル。
携帯電話向けのウェブページに加え、パソコン(PC)向けのウェブページも表示できた。

当時の携帯電話では、CompactHTMLで記述された携帯電話用のウェブページしか閲覧できなかった。
AH-K3001Vは、PCページも表示できる画期的な機種として人気を博し「京ぽん」の愛称で親しまれた。


日本でiPhone 3Gが発売開始し、スマホ時代がスタートして約10年。今できて当たり前なことも2000年代の初頭ではほとんどのことが実現できていなかった。

物心ついたころからスマホがあった世代には信じがたいかもしれないが、スマホが当たり前の今の世界と、それ以前の世界とでは、まったく異なる価値観とライフスタイルがあったのだ。


イラスト:たら
執筆:2106bpm