1位に輝いた豊田市の市街地の様子(写真:Flatpit / PIXTA)

『全47都道府県幸福度ランキング2018年版』(寺島実郎:監修、日本総合研究所:編)が東洋経済新報社より刊行された(5月25日発売)。各自治体・メディアが注目する「総合ランキング」についての解説を転載し、紹介する。都道府県ランキングと政令指定都市ランキングに続き、今回は中核市ランキングをお届けする。

富山市が6位から2位に躍進

全39指標の総合ランキングでは、2016年版に引き続き豊田市が1位になった。基本指標、仕事分野で1位を獲得しており、やはり自動車産業という強固な産業基盤が強みになっている。教育分野も2位であり、今後もトップの座を維持していく可能性は高い。


2位は富山市であった。2016年版の6位からの上昇であり、健康分野の改善が顕著である(29位→12位)。生活分野、教育分野で1位となっており、世代や男女を問わず安定した生活を享受している。安定した生活基盤は今後も盤石とみられる。

(1)基本指標ランキング─ 自動車産業が牽引する豊田市

1位が豊田市、2位が岡崎市、3位が豊中市の順になっている。

豊田市は、「財政健全度」が上昇(13位→1位)、「一人あたり市民所得」は3位を維持しており、自動車産業の堅調さがうかがえる。「選挙投票率(国政選挙)」は1位と政治への関心も高い。

一方で、45位は青森市、44位は高知市、43位は和歌山市となっている。

青森市は、「一人あたり市民所得」が45位、「人口増加率」が43位と低迷しており、 2016年版から順位を落とした。人口減少時代に直面する我が国においては、地域資源 の掘り起こしや人材の育成など、地域の活性化に向けた対策を自治体と市民が一体となって講じることが求められる。

健康は長野市、文化は岐阜市

(2)健康分野ランキング─ 長野市がトップ、盛岡市が健闘

1位が長野市、2位が盛岡市、3位が前橋市の順になっている。

長野市は「平均寿命」および「体育・スポーツ施設数」が1位であり、長寿でスポー ツに親しむ環境が整っている。盛岡市は前回から順位を上げて、長野市に迫ってきている(6位→2位)。

一方で、45位は函館市、44位は下関市、43位は長崎市となっている。
健康であることは、仕事や趣味を楽しむための基礎であり、社会保障費の削減にもつながるため、個々人の健康づくりに対する意識の向上がより一層求められる。

(3)文化分野ランキング─ 国際色豊かな岐阜市

1位が岐阜市、2位が高崎市、3位が前橋市の順になっている。

岐阜市は「姉妹都市提携数」と「外国人住民数」が上位であることが貢献し、1位を獲得した。姉妹都市との相互交流や外国人住民との共生など、多様な価値観に触れる機会を有している。

一方で、45位は豊中市、44位は越谷市、43位は高槻市となっている。

異文化との触れ合いや外国人との交流など、多様性を受け入れる環境を整えることが 時代の変化に対応するためのカギであり、そうした取り組みの促進が求められる。

(4)仕事分野ランキング─ 1位は豊田市、富山市が 3位に浮上

1位が豊田市、2位が宇都宮市、3位が富山市の順になっている。

豊田市は自動車産業を武器に雇用領域と企業領域において強みを発揮している。富山市は前回3位の長野市を抜いてのランクインとなった。

45位は那覇市、44位は横須賀市、43位は函館市となっている。

安定した雇用の確保に加え、地域に蓄積された「技」や「知」を活かした新技術や新産業の創出が求められる。

生活・教育で富山市がトップ

(5)生活分野ランキング─ トップ3は変わらず

1位が富山市、2位が横須賀市、3位は秋田市の順になっている。

富山市は「待機児童率」および「生活保護受給率」が1位、「持ち家比率」が3位と個人(家族)の領域の全指標において上位に位置しており、家族のつながりと支え合いを 大事にする住民意識の高さがうかがえる。

一方で、45位は尼崎市、44位は東大阪市、43位は那覇市の順になっている。

高齢化率の上昇とともに一人暮らしの高齢者も増える状況において、家族や地域とのつながりや支え合いを深める取り組みがより一層求められる。

(6)教育分野ランキング─ 富山市が順位上昇トップへ

1位が富山市、2位が豊田市、3位が高槻市の順になっている。

富山市は「不登校児童生徒率」(9位→4位)および「社会教育費」(13位→ 3位)で の順位が上昇し、2016年版から順位を上げて、1位を獲得した。生涯を通して学び続けることのできる環境が整っている。

一方で、45位は横須賀市、44位は和歌山市、43位は越谷市となっている。

学校における教育環境の整備もさることながら、長い人生を生き抜くための学習環境の整備も一層求められる。