コンビニ業界の知られざる裏側を、内情に詳しいライターの日比谷新太さんがレポートする当シリーズ。前回の「コンビニコーヒー戦争の新たな動き」に続いて、今回取り上げるのは「コンビニの24時間営業」について。人手不足が恒常的な問題となるなかで、365日・24時間営業を続けてきたコンビニ業界はどのような道を歩むべきか、コンビニ評論家の日比谷さんが論じています。

見直しの時期を迎えるコンビニの24時間営業

ファミリーレストランなどで24時間営業を止めるところが増えるなか、コンビニにおいても24時間・365日営業の是非について、各社で検討が行われています。しかしながら、この手の議論はすでに20年ぐらい前から続いているものです。

最近ではこのようなニュースがありました。福井県のあるセブンイレブンオーナーは、記録的な大雪を理由に、24時間営業の停止を何度も訴えました。しかしセブン側はその要求には応じず、店を開けるよう回答したのです。一緒に勤務していたオーナーの妻は、長時間の雪かきの末に倒れて救急車で運ばれましたが、オーナーは営業をやめられないため、付き添うことができなかったとのこと。他のスタッフの出勤も困難で、結局は約50時間不眠で働くことになったそうです。

コンビニ業務には飲料ケースの出し入れや商品の品出し作業など、肉体労働も数多くあります。過去に約2日間ぶっつづけの不眠営業を経験したというスタッフに話を聞いたことがありますが、レジでお客さんの対応をしながら、そういった数々の作業をこなしていくと、だんだんとハイになってくるとのこと。一時レジ待ちの列がお店の外にまで伸びたそうですが、誰の助けを求めることもできず、たった一人でレジを打ち続けたそうです。

また、とある私鉄線の駅前にあった店舗での出来事です。一般的には深夜時間帯であっても、駅前の店舗なら繁華街が近くにあることも多く、そこそこの客数が見込めるのですが、その駅は郊外にあったため深夜時間帯に駅前・店前を通る人はほとんど皆無でした。

この店舗のオーナーがある日、チェーン本部に反旗を翻しました。「お客さんが来ない時間に営業する必要性はない。営業時間は加盟店契約には24時間と記載されているが、24時間以外の契約に変更する」と。チェーン本部としては、この店舗が深夜営業を中止すると、商圏を他社に奪われる危険性や、物流納品時間の変更などのコスト増が発生するため、24時間営業を続けるよう必死の説得を行いました。

しかし最終的に、チェーン本部とこのオーナーとの契約は打ち切りとなり、直営店としてリニューアルオープンすることになりました。この契約変更手続きが解決するまでの期間、店舗を維持させ続けるため、本部社員が日替わりで深夜勤務をしていたそうです。

ローソンの人手不足への対応は評価されるのか

24時間・365日営業を続けているコンビニが、社会にとって必要不可欠なインフラとなっていることは間違いない事実です。しかしながら現実は、先ほどのニュースにあるように、経営者(オーナー夫妻)が自らの身を削って店舗運営を続けている側面もあります。

コンビニ本部からすると、営業時間短縮は売上ダウンに繋がり、加盟店ロイヤリティ収入の減少に繋がります。よって、オーナーから営業時間を短縮したいという訴えがあっても、「フランチャイズ契約に則り、役割分担をしています」と回答し、オーナーが倒れようとも営業を続けさせようとします。言葉は悪いですが、オーナー夫妻を含めた店舗運営コストは度外視なのです。

日本は今後人口が減少していき、同時に働き手も減少していきます。このような状況下で、これまで暗黙の了解で続けられてきたオーナー家族による滅私奉公が途切れてしまうと、これまでなんとか続いていたコンビニの24時間・365日営業が立ち行かなくなってしまうのは明白です。

こういう流れも影響してか、最近ローソンは深夜のレジを無人にした店舗を今年中に展開すると発表しました。レジ打ちの人員削減を目的とし、お客様のスマホに専用アプリをダウンロードしてもらい、それで決済を行うというもの。スマホを持たないお客さんは店内に入ることができないので、間違いなく売上は減りそうですが、それでも人手不足への対応をすることが重要と判断したのでしょう。

先日発表されたローソンの決算発表は、あまり良い結果ではありませんでした。売上的にも苦境のなか、ローソンのこのような取組みが、果たしてチェーンとしての競争力を高めるものと判断してもらえるかどうか、とても興味深いところです。

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