写真はイメージです(写真=iStock.com/MoustacheGirl)

写真拡大

50歳前後の「バブル世代」が、老後に向けた「最後の貯め時」を迎えつつある。給与額がピークを迎える一方、子供が大きくなり教育コストの負担が軽くなる時期だからだ。ところが、そう簡単にお金を貯められないのがバブル世代。その金遣いには5つの特徴がある。同じバブル世代のファイナンシャルプランナーが警鐘を鳴らす――。

バブル世代の「浪費癖」と「ユルすぎた就活」との関係

「ああ、それが『バブル世代』というヤツなんですね」
「ちょっとバブルの匂い、しますよね?」

「団塊ジュニア世代」や「さとり世代」と呼ばれる20〜30代と一緒に仕事をしていると、雑談時にそう冗談っぽく指摘されることがある。「バブル世代」とはバブル景気(1986年11月〜1991年2月)の頃に新入社員となった世代のこと。おおむね1966年から1970年生まれの者を指す。筆者は1969年生まれなので、バブル世代ど真ん中である。

○○世代とひとくくりにされるのはちょっとカチンとくるが、言動の端々に“バブル世代臭”が出てしまうのかもしれない。自分でも心当たりがあるのは、やはり消費スタイルだ。ファイナンシャルプランナーという職業柄、「家計は節約が命」と口酸っぱく言いながら(自分も実践している)、筆者はお仕事を一生懸命したご褒美としてのブランド品が好きだ。

新年度のスタートに、わが身を振り返ってバブル世代の金遣いの特徴を整理してみたい。

▼東京の会社を受けるたびに交通費と宿泊代が出た

バブル世代」の歴史を簡単に振り返ってみよう。

今、2019年入社組の就職活動が真っ盛りで「超売り手市場」と言われるが、バブル世代の就活はその比ではなかった。筆者自身も就職活動の際、ほとんど苦労をした記憶がない。

当時、多くの企業は、内定した学生を囲い込むため、国内外の旅行に連れて行き、すしや焼き肉、しゃぶしゃぶなど豪華な食事を振る舞っていた。

筆者の出身大学は関西だったが、東京本社に説明会や面接を受けに行くと、どの企業からも交通費や宿泊費を受け取ることができた。筆者の周囲には、同じ日に何社もアポを取り、各社から「実費」を受け取り、ちょっとした額の臨時収入を得ていた者もいた。新卒を大量採用するためには、そうしたコストも必要経費と考える企業が多かったのかもしれない。

あの頃、社会全体の羽振りがよかった、という印象を強くもっている。他にもエピソードには事欠かない。

「ボーナス時には手渡された封筒がはち切れんばかりになって、縦に置くことができた」
「会社支給のタクシーチケットで、ちょっとした外出でもすべてタクシー」
「毎週末には、会社の横にお迎えの外車がずらりと並ぶ」
「ボーナスを手にしたら、いつも海外旅行に行く」
「全身すべてブランド品」
「結婚する予定もないのに戸建てを購入した」

まさに浮かれていたとしか言えないエピソードが多々あるが、当時は「これが当たり前」の状態だった気がする。そして、若い頃にインプットされたそうした常識・習慣から抜け出せない金遣いをしているのが、バブル世代なのだ。

■人生最後の「貯め時」に貯められないバブル世代

▼「バブル世代」のライフスタイル・価値観の特徴

バブル世代は現在(2018年)、48〜52歳となっている。子どもが成長し、手を離れはじめて教育費負担も一段落。再び、自分の時間が取れるようになったという人も多いだろう。

国税庁「2016(平成28)年分民間給与実態統計調査」(2017年9月発表)によると、ここ10年の平均給与は、ほぼ横ばいあるいはやや減少している(2006年分435万円→2016年分422万円)。

しかし、年齢階層別でみると、おおむねバブル世代の平均給与は、50歳台前半のピーク時に向けて、右肩上がりで上昇傾向にある(図表1参照)。

ただし、55歳前後には管理職などから外れる「役職定年」となることが多いため、定年に向けて年収が減少する可能性は高い。リタイア後の生活や働き方を考えると、最後の「貯め時」に向けて、消費行動に励む経済的余裕はない家庭も多いはずだ。

しかし、自分の時間が増え、自由に使えるお金も増えてくると、かつて謳歌したバブル期を思い出して、お金を派手に使いたくなる。浪費した後で悔やまないよう、バブル世代のライフスタイルや消費行動の特徴を見ながら、家計の「引き締めポイント」を考えてみたい。

■高級ブランドは予算オーバーでも平気で買う

バブル世代の金遣いの特徴その1:「ラグジュアリーなモノ・コト、ブランド品=良いもの」という価値観が強い

バブル世代といえば、グルメ、クルマ、エステ、スキー、海外旅行、ブランドファッションなど、さまざま消費体験をしてきている。ショッピングが大好きである。身分不相応な高価なブランド品を若いうちから持っている人も多く、それによってブランド品は良いものである・安心である、という価値観を揺るぎないものにしている。

JTB総合研究所がバブル世代の男女1651人にアンケート調査を行ったところ、気に入った高級品を購入する際の行動について、「本当に良いものだと思えば、予算を超えても購入する」と回答した人は全体の46.4%だった(図表2参照)。このなかでも、「夫婦のみ」「子どもが18歳以上の夫婦」の層は、全体平均よりも「予算を超えても購入する」と回答した人が多く、経済的余裕を感じさせる。

老後にじゅうぶん備えるためには、「より高品質高価格のこだわり品を選ぶ」「1回の返済額が大きく、負担の大きいローンを組む」「つい衝動買いをする」といったことのないように注意したいものだ(自戒を込めて)。

バブル世代の金遣いの特徴その2:「外見・見た目」を気にする。アンチエイジングには敏感

雑誌業界は「部数減」にあえいでいるが、バブル世代を含む「アラフィフ」をターゲットとした女性誌(『eclat』『HERS』など)は好調で、競合誌もたくさんある。それらの雑誌で欠かせない特集は「美容」「ビューティ」に関する記事だ。

もっと若い世代の女性誌にもビューティ特集はあるが、アラフィフ向け雑誌では掲載されているアイテムの単価がグッと高い。バブル世代は「実年齢より若く見られたい」という願望が強いようで、美容やアンチエイジングにお金を惜しまないという人が多いのだろう。若い頃に、経済的余裕があったバブル世代は、「自分磨き」にもお金をかけてきた。今後、シニア層になっても高い美容意識を持ち続けるにちがいない。

日々のお手入れの成果に自信があるからか、バブル世代は自分の年齢を聞かれて「いくつに見える?」と返答しがちだ。それは相手に「どう? 若く見えるはずよね?(実年齢よりも上だったら承知しないから!)」と脅しているのも同然なので、バブル世代の女性読者は注意したほうがいい(自戒を込めて)。

■「自分たちが経済を活性化させている」と本気で語る

バブル世代の金遣いの特徴その3:見栄っ張り、太っ腹。ワリカンするくらいならおごる

バブル世代は、若い頃に上司や先輩にたっぷりおごられてきた。男であれ女であれ、会計時にサイフを出そうとすると「あなたたちが同じ立場(部下を持つ状況)になったときに、ご馳走してあげればよいから」と言われてきた。

よって、自分より下の年代の人と同席して、ワリカンとなると、落ち着かなくなってしまう。そして、本当は経済的余裕がないのにもかかわらず「ここは俺が(私が)」などと頑張ってしまう人が少なくない。これは明らかに自分の首をしめる行為だ。

さらに「50代になったら、これくらいの○○を持たなくては」的な発想で、つい見栄を張って、身分不相応なモノを持つのも要注意だ。

バブル世代の金遣いの特徴その4:仲間同士で交流することが結構ある

子どもが成長し、親子で出かける機会が減ってきた一方、かつての友人や仲間同士あるいは新しいコミュニティで、旅行やスポーツ、食事などを楽しんだり、交流を深めたりする人も多い。

SNSなどで、手軽に連絡が取れるようになったことも大きいが、学生時代に、サークル活動やアルバイトに励んだバブル世代は、さまざまな交友関係やネットワークを持っている。

ただし、経済(給与)格差がある仲間との付き合いは、「毎回、そんな高いお店でランチなんかできない。でも仲間外れにされるのはちょっと……」というジレンマも生む。経済的負担を強いることがないよう、店選びには神経を使ったほうがいい。

バブル世代の金遣いの特徴その5:消費することで経済全体が回っていると考える

ここ最近、バブル期並みに経済回復をしたというニュースが出ているが、消費者の多くはそれを実感できていない。なぜなら給料が上がっていないからだ。反対に、物価が上がり、税金や社会保険料の負担が増えているため、日々の生活を苦しいと感じる人のほうが多いだろう。

来秋には消費税増税が予定されている。特に20〜30代は、将来の先行きが不透明であるため、お金を使いたくても心配で使えない状況だろう。ところがバブル世代は違う。前出のJTB総研の調査によると、景気回復による収入・支出への影響について、「収入は変わらない」と答えた人のうち、22.8%は「使うお金は増えている」と回答している(図表3参照)。ちょっと景気が良くなると、収入が変わらなくても、パーッと使いたくなってしまうのだ。

バブル世代の価値観では老後を乗り切れない

同じバブル世代の人々と付き合っていると、「個人消費に励むことで、自分たちが経済を活性化させている」といった言葉も耳にする。だが、「経済貢献」をお題目にして、安易な消費行動をすることは慎んだほうがいいのは言うまでもない。

こうした5つの特徴は、あくまで筆者の感じた他の世代との差異であり、バブル世代のすべての人に当てはまるわけではないだろう。消費の優先順位を決めて、子供の成長などライフステージにあわせて消費スタイルを変化させきた人たちが大半のはずだ。

しかし、バブル期の経験や価値観は、そう簡単には消滅しない。何かのタイミングで隠れた欲望がむくむくと復活する可能性はある。そんなバブル世代特有の「欠点」を肝に銘じないと、老後生活を乗り切ることは難しい。ぜひ気をつけてほしい。

(CFP、一級FP技能士、消費生活専門相談員 黒田 尚子 写真=iStock.com)