カブス・ダルビッシュ有【写真:Getty Images】

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MLB公式サイトが特集記事「ダルビッシュとカブスはこの上ない組み合わせ」

 メジャー7年目のシーズンを迎えるダルビッシュ有投手が、カブス移籍でさらなる進化を遂げる可能性があると、MLB公式サイトが分析している。カブスは、名将ジョー・マドン監督とレイズ時代にもコンビを組んでいたジム・ヒッキー投手コーチを今季から招聘したが、ダルビッシュの“眠っている能力”を引き出すために最適な指導者だというのだ。

 現在、春季キャンプで順調に調整を続けている右腕は、先発ローテの3番手で開幕を迎える予定。オープン戦でも上々の投球を見せており、不安はなさそうだ。そんな中、MLB公式サイトは「カブスへの移籍で、ダルビッシュはどのように更に良くなるのか」と題した特集を掲載。「ユウ・ダルビッシュとカブスはこの上ない組み合わせかもしれない」としている。

 記事では、日本人右腕について「ダルビッシュのような、引き出しが多くエネルギッシュな武器を持っている投手はほとんどいない」と称賛。一方で「ダルビッシュのレパートリーにおいて、まだ開花されていない素質が残っている面がある」と指摘している。「それは、高めへの直球」だという。

 投手の基本は低めにボールを集めることとされている。ダルビッシュと同じ2012年にメジャーに活躍の場を移し、マリナーズの先発ローテーションを支えてきた岩隈久志投手は、丁寧に低めにボールを集めることで安定した成績を残してきた。ただ、ダルビッシュについては直球を高めにも投げることで、打者を抑え込むことが出来るというのだ。

 そして、それを「専売特許」にしているのがヒッキー投手コーチだという。レイズ時代には高めへの直球を軸にするように教え込み、多くの投手を成功に導いたという事実を紹介。ダルビッシュがこれを取り入れることでさらに良くなるとする根拠は、直球の回転数だとしている。

昨季メジャー3位の回転数を誇ったダルビッシュの直球

 ダルビッシュが投げるボールのスピン量がメジャー屈指であることは、広く知られている。実際に、直球の回転数を1分間に換算した「rpm」の値を見ると、昨季500球以上を投げた投手の中で、ダルビッシュの「2502」は3位に入る。1位はジャスティン・バーランダー(アストロズ)の「2552」、2位はマックス・シャーザー(ナショナルズ)の「2504」。記事では、このデータを紹介しつつ、「高回転の球は、ライジングファストボール(ライズボール)効果を生み出すのだ。その”浮き上がる”効果が伴うことで、高回転のフォーシーム(直球)については、投手が高めに投げることが一際、効果的になるのだ」と指摘。この“武器”にダルビッシュは重点を置いてこなかったというデータが見られるという。

 もちろん、多くの投手にとっては、低めにボールを集めることが効果的。実際に、メジャー最強左腕カーショーは高めに投げる頻度は少ないというが、「ダルビッシュはカーショーには無い高回転のボールを投げており、それが示すこととしては、この右腕は飛躍するチャンスを逃してしまっているのかもしれないということだ」と記事では指摘。直球を低めに集めるよりも高めに――。これはダルビッシュだからこそ生きる手段。「とりわけ捉えることが困難」なボールだからだ。

「昨年ダルビッシュは、高めのフォーシームで最低でも100スイングを奪った128人の投手の中で、同様の投球(高めのフォーシーム)におけるNO1の空振り奪取率を記録している。ダルビッシュの高めの直球に対しての打者の空振り率は42.2%である」

「ダルビッシュの直球の回転率は、大多数のメジャーの先発投手たちとは一線を画すものである。これは彼のチームが活用すべき強みである。そして彼は、うってつけの場所にやってきたのだ」

 特集では これらのデータから、やはり高めへの直球は増やすべきだと記事では結論づけている。カブス移籍が“新境地開拓“のきっかけとなる可能性は十分にありそうだ。(Full-Count編集部)