教育を受けた年数が短く、収入も低いほど健康のリスクが高まることがわかった。滋賀医科大学・アジア疫学研究センター長の三浦克之教授らが3月5日、研究の結果を発表した。

厚生労働省の国民健康・栄養調査(2010年)に参加した20歳以上の男女約2900人のデータを分析したところ、世帯年収が200万円未満の女性は、600万円以上の女性と比べて、肥満のリスクが2.09倍になることがわかった。教育年数が9年以下の人も、10年以上の人に比べて、肥満リスクが1.67倍だった。

教育年数が短いと生活習慣にも差、歯の本数も少ない

世帯年収が低いほど炭水化物を多く食べていることも明らかになった。炭水化物がエネルギーに占める割合は、世帯年収が600万円以上だと男性58.6%/女性56.8%、200〜600万円未満では男性59.5%/女性58.3%、200万円未満では男性61.1%/女性59.7%だった。野菜の摂取量を反映する「尿中カリウム排泄量」も収入が低いほど低くなっている。

研究チームの担当者は、

「収入が少ないと比較的安価でお腹がいっぱいになるものを食べる傾向にあり、炭水化物に偏るのではないか」

と指摘していた。

また、教育年数が短いと、健康に対しての意識も低くなることがわかった。教育年数が13年以上の人は、9年以下の人に比べて、生活習慣の改善に取りくんでいる人が男性で2.86倍、女性で2.36倍だった。教育年数が長い人、持ち家に住んでいる人ほど健康診断を受診している割合も高い。さらに、教育年数が短い人、収入が低い人は歯の本数も少ないことがわかった。

研究結果を受けて、前出の担当者は、「個人に保健指導を行う時は経済状況を踏まえて行ってほしい。行政はこうしたエビデンスを生かして施策を行ってほしい」と話していた。研究報告では、「健診受診の推奨」「生活習慣指導の強化」などの対策を提言している。

※画像は、「日本人の循環器疾患危険因子と社会的要因の関連」より