一気に手広くやったのではないか。前半は悪くなかったが後半は特にMVNOのあたりから財務状況が悪化したようだ――そう語るのは、MAYA SYSTEM代表取締役社長の吉田利一氏だ。

吉田氏(左から2人目)とECマーケティング部長の山崎正志氏(一番右)

 9日、FREETELのスマートフォン事業を引き継いだMAYA SYSTEMの記者説明会が開催された。冒頭のコメントは、何がFREETELのミスだったのかという質問に対する吉田氏の第一声だ。

 同氏は、財務上の分析結果として、MVNO事業においてリアル店舗を展開したこと、2016年11月に端末代と通信回線をセットにした「スマートコミコミ」(その後スマートコミコミ+へ)を投入したことが一番大きく影響したのではないか、と分析する。

吉田氏
「MVNOはたくさんのお金が入る事業ではない。ある程度の数が必要がなければやっていけない。30万でははっきり申し上げて事業としては厳しい。やっぱり100万単位。それでMVNOとして成り立つ。獲得するならどこかに集中すべきだった」

 その一方で、日本のユーザー目線にあわせてスマートフォンを開発してきたことは評価しており、事業を引き受け、次なる展開を図ることになったようだ。

jetfiを手がける

 2007年創業のMAYA SYSTEMは、人材派遣やサポートセンターの受託事業を中核に成長してきた。社員がやりたいと手を挙げれば新規事業に参入することもあり、最近ではレストラン事業やビューティ事業にも進出した。一方、通信関連では、近年海外で使えるモバイルWi-Fiルーター「jetfi(ジェットファイ)」を提供。これは組込型のSIMカード、いわゆるeSIMを採用するモバイルルーターを提供するもので、どこでも手軽に通信環境を手にできるサービスだ。

 NTT出身という吉田氏は、台湾でjetfiを目にして事業化を志し、3年ほど前にNTTを退職、MAYAにジョインしたと説明。そうした中、2017年6月、当時、FREETEL事業を営んでいたプラスワンマーケティング(POM社)がeSIM端末の開発に着手した、と一部で報じられた。そのニュースを目にした吉田氏は、プラスワンへ「一緒に仕事をしたい」と直談判。jetfi事業を手がけつつも、自社による端末製造には着手できていなかったMAYAにとって、日本人ユーザーにあわせた端末が必要と考えていたところで、POMとの協力はひとつのチャンスと考えたのだという。

 その後ミーティングを重ね、出資も検討していた中、「逆にPOMさんの調子が悪くなった」(吉田氏)とのことで、POMが2017年12月に民事再生を申請、その後の交渉により、2018年1月、MAYAがFREETELの端末事業だけを引き受ける形になった。こうした経緯から、吉田氏はMAYAが突然、名乗り出たわけではないと語る。

 なお、POMの取締役の一部は今もPOMに残り債務整理などを行っているようで、MAYAには加わっていない。当時、POMをリードした増田薫氏もMAYAに加入することはないという。

eSIMで差別化、価格で競争

 そんなMAYAが今回、FREETELのスマホ事業を手にし、これからどんな端末を手がけていくのか。吉田氏は、eSIMをひとつの道筋にする考えだ。すでにjetfiでeSIMデバイスと、海外でも好きなタイミングでチャージなどが利用できるサービスを手がけている中、遅くとも今夏までにはeSIM対応のスマートフォンを発表する方針。「MVNOの弱みである海外利用を我々がしっかりサポートする。格安スマホを海外でも自由に使える」とアピールする。

 スマートフォンだけではなく、IoTもeSIMデバイスとして視野に入れる。日本製の建設機械を海外に輸出した場合、たとえば現地でソフトウェア更新などで100MBほどダウンロードさせようとすると、日本の大手キャリアの国際ローミングであれば高額な費用になってしまうが、そこを100MB1000縁程度の単価で提供したいという。車載機器などへの対応は、大手キャリアも視野に入れる分野だが、吉田氏は現状の大手キャリアの価格は高額であり、同社は料金プランで差別化できるという考えを示した。

サポート体制、そして今後

 サポートセンターの受託事業も展開するMAYAでは、4月をめどに、FREETELスマートフォンのサポートもグループ内へ完全移行させる考え。

 またこれまで「PREMIUM補償」として展開してきたサービスも再構築し、ユーザーが不注意でスマートフォンを故障させた場合でもきちんと対応できる環境を整えたいという。

 たとえばバッテリーを交換できる「priori3」は10万台ほど販売し、現在でも6〜7万人がアクティブに利用しているという。発売から1年以上が経過し、バッテリーの買い換え需要もある。今回発表した「Priori 5」はそうした声を踏まえてバッテリー交換ができる端末として投入することにした。交換用のバッテリーはアクセサリーとして量販店やオンラインで販売する方針。

 端末の割賦契約は楽天側に引き継がれたほか、端末購入から12カ月経過で残債を支払うことなく次のスマートフォンへ機種変更できるサービス「とりかえ〜る」については、今後、MAYAと楽天の間でどういった形にしていくか協議していく。なお「とりかえ〜る」の利用者数は数千人とのこと。

 今後のラインアップは、ミドルとローエンドが中心であり、その上でeSIM対応を進めていく方針。ただし、eSIM対応のメリットである海外での利用を踏まえると、対応周波数が広いモデルがマッチする。そのため、ローエンドよりもミドルのほうが中心になるのでは、と吉田氏。最低でも39程度の対応バンドを目指すとのことで、今回の「REI 2 Dual」の後継にあたるREIシリーズが中心になると見通しを示す。

 海外事業については、ベトナムと台湾にあるMAYA自身がこれまで展開してきた拠点を中心に東南アジアへの拡大をはかる。ドバイの拠点はPOMの海外子会社を受け継いだとのことで、アフリカで安価な機種を提供していく。アフリカのパートナーに対して、すでにMAYAの海外事業担当者が訪問し協議をしており、今後も受注を継続できそうという感触があるとのこと。

 9日に発表した新機種は、POM時代の2017年春ごろから開発が進められてきたが、それまでのFREETELスマホのようなODMが用意したベースモデルの日本版ではなく、仕様策定〜開発を日本側で進めてきた。しかし資金繰りの悪化により、開発が頓挫。そこへMAYAの助け船が入り、製造をEMSに委託して発売へこぎ着けた。

 吉田氏は「1月15日からスマートフォンの販売も再開した。まったくダメかと思っていたが、しっかり売れている。お客さまに(民事再生の件が)知られていないのかなと思いつつ、FREETELブランドをしっかり受け止めていただいている部分もある。悪いイメージは消していきたい」と意気込んだ。