20代の家計は、貯め方より使い方を学べ

写真拡大

「お金に縛られない生活」を手に入れるにはどうすればいいのか。雑誌「プレジデント」の特集「億万長者入門」では、34歳で「お金に不自由しない状態」を実現した田口智隆さんに、20代から60代までの5つの年代ごとに赤字家計の再生法を聞きました。第1回は世帯年収500万円という20代夫婦へのレクチャーです――。

----------

20代:大川家の場合

家族構成
夫 29歳 システムエンジニア
妻 26歳 惣菜店パート
年収
額面 夫 400万円 妻 100万円
うちボーナス 夫 70万円
貯蓄額
100万円


夫が会社員、妻はパート勤務の20代DINKs。夫婦ともに高級品に対する物欲はなく、食費も洋服もできる限り安く済ませる努力はしているものの、なぜか毎月赤字に。仕事に対する向上心も薄く、いわゆる「低体温」。お互いの仕事のことや将来について夫婦で話し合うこともほとんどない。

----------

▼食費や被服費など、節約しているつもりが、なぜか赤字になってしまう。

■失敗した経験で「お金遣い」の基準を

最近の20代は将来に対する不安から財布のひもが固いという。大川家の妻もその1人。日々節約に励んでおり、複数のスーパーをはしごして安いものを買っているし、洋服はファストファッションばかりだそう。

しかし、家計は毎月3万円近い赤字であり、家計簿を見ると、交際費が5万円、ペット2万円、被服・美容費2万円といった支出も目立つ。ファストファッションばかりと言うが、安いからと大量に流行りの服を買いまくっているし、愛猫のご飯代、トリミング代は惜しまず使っているようだ。また夫は友達が多く、しばしば飲み歩いているという。

普通はこうした支出を指摘し、「浪費」と断ずるかもしれない。しかし私の発想は少し異なる。一概に節約が正しいとは言えず、むしろ、若いうちにお金を使わないのは問題だ。

私は20代の頃、キャバクラでお金を使いまくったり、高価な服を好きなだけ購入したりして、500万円もの借金を抱えてしまった。しかしそうした経験があったからこそ、お金と真剣に向き合うようになり、今、こうしてお金について見解を述べたり、アドバイスできたりするようになった。

節約ばかりを考えていると、将来、かけがえのない財産になるような経験を積みそこなってしまう。若いうちはお金を使うことに臆病にならず、「あのお金は使ってよかった」「あのお金は見栄のために使っただけで無駄金だった」など、お金に対する判断基準を身に付けることが大切だ。基準ができてはじめて、お金を有意義に使うことができるのである。

■仲間内との飲み会は、「投資」になるか

支出は、今を生きるために必要な「消費」と、快楽のための「浪費」、将来のための「投資」の3つにわけられる。これをお金の判断基準として意識してほしい。たとえば外食に高額のお金を使っていたとしても、料理やサービスについての知識が身に付き、仕事に生かせるのであれば、その支出は「浪費」ではなく「投資」であり、大いに意味がある。

夫は交際費を5万円使っているが、中身はいつも同じメンバーとの飲み会で「浪費」に近い。対して、先輩、異業種の人など、自身の成長に繋がりそうな人との交流にかかった費用であれば「投資」になり、惜しまず使うべき、というのが富豪的発想だ。もし無駄な出費になったとしても、若いうちなら十分取り返せる。私も500万円の借金を反省し、2年で完済、その後、その経験を仕事に繋げることに成功した。お金の使い方で失敗していいというのが、20代の特権なのである。

20代夫婦に認識してほしいのは「子どもがいないうちがお金の貯めどき」ということである。子どもができると教育費がかかり、貯めるパワーが落ちてしまう。思い切ってお金を使えと言いながら矛盾しているようだが、「支出を抑える」のではなく「収入を増やす」のである。大川家の場合、会社員の夫がすぐに大幅な収入アップを図るのは容易ではないが、妻はパート勤務で収入アップの潜在力が高い。勤務時間を増やしてもいいし、契約社員や正社員を目指す、という選択肢もある。

手取りを100万円から200万円に増やせば、少なくとも100万円は丸々貯蓄できる。1年に100万円貯めれば、元本だけでも10年で1000万円の資産ができる。さらにお金を運用できる期間が長ければ、そこにつく利息も多くなる。

若くて健康な20代の妻が100万円のパート収入に甘んじているのは、大いなる機会損失だ。複数のスーパーを回って支出を抑えるより、収入を増やして将来に繋げてほしい。夫は「浪費」を減らして「投資」を増やし、5年後の収入増を目指す。富豪へのスタートダッシュを図ってほしい。

富豪の掟●消費と浪費を減らして、投資を増やす
消費:住居費や食費など、今を生きていくために必要なお金
浪費:快楽のために使う、無駄遣いのお金
投資:貯蓄や資産運用の資金、自己投資の教材など、将来のために使うお金

(ファイナンシャルインディペンデンス代表取締役 田口 智隆 構成=高橋晴美)