昨年秋からのアンジェリーナ・ジョリーとの離婚騒動で、長男虐待疑惑やアルコール依存症などが報じられ、一時はマイナスイメージが色濃くなっていたブラッド・ピット。 
あの“俺様”が似合うブラピが、家族に見放され、しおしおとセラピーに通う姿なんて、想像できません。
もっとも、好きな飲酒も絶って猛反省の意思を示したおかげで、復縁の可能性も出てきたという噂も……雨降って地固まる、といけばいいですね。

今日はそんなファミリー・ロスのブラピへの応援をこめて、「男が憧れる男」を演じた作品、なかでもちょっぴり愛が匂う?(あくまでゼルダ基準です)作品をピックアップしてみました。
(以下はネタバレを含みますので、未見の方はご注意ください。)

1位 『ファイト・クラブ』(99)のタイラー・ダーデン


『ファイト・クラブ』

「僕」と、「僕」の前に現れた危険な男女との奇妙な三角関係が意味するもの

ブラピ史上最高にカッコいい作品!と個人的に信じてやまない、デヴィッド・フィンチャーの傑作映画!
本作の主人公は、多分童貞で、通販家具を買いそろえるのが趣味の「僕」(エドワード・ノートン)。
不眠症に悩む「僕」の前に現れた、タイラー・ダーデン(ブラッド・ピット)とマーラ・シンガー(ヘレナ・ボナム=カーター)。魅力的だけれど刺激的すぎる2人と「僕」との奇妙な三角関係がベースにあり、その一方で、タイラーが組織した秘密結社「ファイト・クラブ」の暴力的な活動が展開されていきます。

実はタイラーは「僕」が作りだした「僕」の理想像・願望の遂行者。
通信販売で物欲を満たし、典型的な草食系男子として生きてきた「僕」が、男らしく生きることに目覚め、理想の自分・タイラーとともに男らしさと変革を目指しますが、やがてタイラーの暴走が始まる、というのが基本的なストーリーです。
どこまでが「僕」の妄想で、どこからが現実なのかがあえて曖昧にされているため、解釈には幅がありますが、映画評論家の町山智浩氏が解説されているように、大量消費社会に対するアンチテーゼはテーマの一つにありそうです。

あの問題のサブリミナル画像には、深い意味がある?

ただ、マーラの存在は、「反大量消費社会」では説明できません。
思うに、マーラも恐らく、タイラーと同じく「僕」の分身なのでは? というのは、タイラーとマーラはよく似ているので……(2人ともチェイン・スモーカー、よく似たヘアスタイル、お揃いみたいなファーコート)
だとしたら、「僕」はなぜ異性の分身を生み出したのか? なぜ2人の分身は、「僕」をさしおいて2人でセックスざんまいなのか……?

原作者のチャック・パラニュークがゲイであることは、作品を紐解く上で考慮されないことが多いのですが、「男らしさ」という性にまつわる内容の作品である以上、それも考慮すべき要素のように思えます。
もし「僕」の中には男性だけでなく、女性もいるとしたら?
冒頭、「僕」がタイラーに拳銃を口に突っ込まれるシーンから始まることも、映画の中で拳銃は男性器のメタファーに使われることが多いことや、本作には男性器のサブリミナル画像が仕込まれていることを考え合わせると、ちょっと意味深。

睾丸癌で男性器を切除し、ホルモン治療の作用で巨乳になった男の胸の谷間に顔をうずめてやすらぎを感じていた「僕」…その時「僕」は何を思ったのか?
そう考えていくと、もしかしたら「僕」のセクシュアリティは「男」と「女」の間で揺れているのかもしれない……という気もしてきます。
「僕」のセクシュアリティという切り口からの解釈も、アリなのかもしれません。

ブラピの魅力がたっぷり詰まった139分!

それにつけても、容姿・暴力性・リーダーシップ・不敵な笑み・鍛えぬいた体・咥え煙草に革ジャンと、もう男っぽい要素がてんこ盛りのタイラー。
まさに、ブラピにうってつけの役! しんみりした役柄よりも、サディスティックで俺様な役がブラピには似合います。
「俺はおまえの理想なんだ」なんてセリフにも、あの美しすぎる腹筋を見せつけられた後では全面降伏ものです。

実はこの作品、遊び心が詰まった個性的な衣裳もみどころ。
なかでもクセの強いブラウンの革ジャンは、ブラピの髪や肌・瞳の色にもすごく馴染んでいて、テロンとしたシャツとのコーディネートも完璧です。
「同じものが欲しい!!」という声が絶えないのか、「タイラー・ダーデン・モデル」として今も販売されているそうで……本作とブラピの人気のほどがうかがえますね。
フィンチャー作品の中でもカルト的人気を誇る『ファイト・クラブ』、ブラピの魅力を存分に堪能できるという意味でもイチオシの1本です。

2位 『ジェシー・ジェームズの暗殺』(07)の義賊ジェシー・ジェームズ


『ジェシー・ジェームズの暗殺』

なぜジェシーの崇拝者ボブはジェシーを殺したのか?

こちらは実話に基づいた作品。
今年のアカデミー賞で主演男優賞を受賞したケイシー・アフレックが、義賊として名を馳せたジェシー・ジェームズ(1847-1882)を殺した男・ボブを演じています。


(実際のジェシー・ジェームズ)


ケイシー演じるボブは、史実ではジェシー・ジェームズの首にかかった懸賞金目当てで彼を殺したわけですが、本作では、当初ジェシーの熱心な崇拝者だったボブがジェシー殺害に至る経緯を、独自の切り口から描いていきます。

ブラピ出演作中最も耽美な1作

本作がボブとジェシーとの間に同性愛的な感情を匂わせていることに関しては、案外異論がないのではないでしょうか?
なかでも、ジェシーが行水する姿を、ボブがそっと盗み見ているシーンは印象深い場面のひとつです。
危うい男を演じさせたらピカイチのケイシー・アフレックだけに、ボブの目つきは一見して、憧れの度が過ぎたストーカー。

背中にボブの視線を感じたジェシーは、ふとボブに、
「俺に憧れてるのか? それとも、俺になりたいのか。」
と問いかけます。
ボブの熱っぽい視線と、その視線に酔っているかのようなジェシーの言葉……ジェシーの裸の背中に、ゾクゾクするような色気が漂うシーンです。

本作が描こうとしているのは、この危うい関係性の延長線上にある殺意。
殺す側と殺される側の愛に似た危うい関係性を描き出した独自の切り口こそが、本作のみどころと言える気がします。
ジェシーの見せる人を虜にする笑顔、その反面の冷酷さ、狂気……どれも『ファイト・クラブ』のタイラーと共通する要素でありながら、死に向かうカウント・ダウンの中で描かれたジェシー・ジェームズには、タイラーにはない深い哀愁が。
これもまた、男に憧れられる男・ブラピの魅力が引き立つ作品。ブラピ本人が製作を熱望したというのも納得です。

『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(94)のルイ


『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』

トム・クルーズとブラッド・ピットの唯一無二の共演作

原作はアン・ライスのヴァンパイア小説(「夜明けのヴァンパイア」)。腐女子目線で描かれた作品として知られている小説でもあります。
事の始まりは18世紀。ブラピ演じる主人公のルイは、ルイジアナの大農場主、彼の心の隙間をついて近付いてきたヴァンパイア・レスタト(トム・クルーズ)によってルイはヴァンパイアに……こうしてレスタトとルイの永遠の旅が始まります。

しかし、人を殺さなければ生きられないヴァンパイアの宿命に苦しみ、レスタトの元を去ろうとするルイ。
ルイの心をつなぎとめるため、レスタトは一人の少女・クローディアをヴァンパイアに変え、2人の娘として育てることにしますが、平穏だったのは束の間。
レスタトとルイの愛憎、ルイへの思慕を抱きながらも、永遠に大人になれないことに苦しむクローディア……3人の深い愛憎の物語が繰り広げられます。

トム・クルーズとブラッド・ピットの唯一の共演作!
しかも、2人はラズベリー賞の最低スクリーンカップル賞を受賞してるんですから、本作では「カップル」と認知されていたわけですよね。
今となっては超ビッグカップル! 当時2人がライバル的なポジションだったことを考えると、一層希少価値の高い作品です。

ヴァンパイアたちがルイを奪い合う

この作品で役者としての引き出しの多さを示して絶賛を浴びたのはトム・クルーズのほうでしたが、ストーリー展開上は、トム・クルーズ演じるレスタトは、ルイに執着するも彼に愛されない寂しい男。
そして、永遠の少女クローディアもルイに対し父親以上の感情を抱いているように……一方、ルイは彼女にあくまで父親としてしか接しないんですが、それでいて、時として父親を逸脱しているように見える危うい一瞬も。
父親と言っても当時ブラピは30代、クローディア役のキルスティン・ダンストも魔性の女の素質を感じさせる少女だけに、2人の間にはそこはかとない禁断の愛の香りが漂っています。

ヴァンパイアものにはなぜか禁断愛が似合いますね。
ほかにもルイを巡るヴァンパイ同士の争いで、次々に犠牲者が。
ルイ、なんて罪な男!

舞台は中盤からヨーロッパに移り、ゴシック・ホラーとしても重厚感たっぷり。
繊細なフリルをふんだんにほどこした豪華衣裳に身を包み、憂いに沈んだブラピの美貌が堪能できる逸品です。

いかがでしたか? 同性に惚れられてこそ真のカッコいい男!! ブラピの魅力をいつもとちょっと違う角度から楽しめる三作品、オススメです。